『我が愛しのヲタ彼女』ヒロインが地雷すぎる!

 世の中、メンヘラで人生が狂う男は絶えない。それは、ひとえにメンヘラと付き合うと、アッチのほうも含めて気持ちいいことも多いからである。粒々辛苦氏(原作)と咲良氏(作画)によって描かれるマンガ『我が愛しのヲタ彼女』(小学館クリエイティブ)は、そのことを教えてくれる良書である。

 主人公・坂入春彦が告白したのは、同じ高校に通う、数々の男たちが告白しては振られる難攻不落の妖精・白石雪。「病弱で週3日ほどしか登校しない謎と神秘に満ちた美少女」だという。加えて、低身長眼鏡っ娘でニーソによって見事な黄金三角形を生み出す……この女の子にみんなが告白するって、この学校はロリコンばっかりか?

 告白はとりあえず成功します。しかし、タイトルから一目瞭然だが、彼女は超弩級のヲタク娘だったのである。腐女子ではなく、アニメもマンガもゲームもコスプレも大好きなヲタク女だ。

 眼鏡すらも自分のキャラづくりのための属性アイテムだったのか、眼鏡を外した彼女は本性を余すことなく開陳し、とりあえずお付き合いは「お試し期間」となる。

 でも、付き合い始めの“お互いに遠慮しながらドキドキ”とかは皆無である。そもそも病弱なのも、学校をサボってオタク趣味を楽しむための設定。なので、初っぱなから朝4時までのオタク講座のメールが続き、翌朝からはハイテンションの電話。さらに、カラオケに行けばアニソン縛りで4時間。「テスト」と称するデートになれば、コスプレでやってくるのである。そんなデートの終盤、春彦は今まで雪に言い寄ってきた男とは違うということで正式に付き合うこととなる。今までの男というのは、雪のオタク話に興味なくて、身体を求めて来たような男ばかりだったのだ。ここまでが第一巻で描かれる。

 ……もうね、ページが進むごとに気づくはずである。「この女は地雷だ!」と。

 そんな彼女の“よかった探し”をできる春彦は、想像力や危機管理能力がまったくないか、あるいはなんかの神の化身である。

 そもそも、オタク趣味を貪るための病弱設定って時点で、正気の沙汰ではない。挙げ句に、バイト代もすべてオタク趣味につぎ込んでいるなんて……。正直、こんな女の子と付き合ったとして、“点”の部分では楽しいだろう。一緒にアキバで遊んだり、コミケ帰りもデート気分。コスプレを試着してポラ撮影したら割引になる秋葉原駅前の某アダルトショップも楽しめそう。当然、コスエッチもアリだ。

 でもさあ、そうした“ハレ”の部分を除いたら、絶望的な日常しか見えてこないんじゃないか? 電話やメールで朝まで一方的なオタトークで睡眠時間を削られる日々。3日続いたら、もう耐えられない!

 本作の物語の描写を見ていくとわかるが、雪の春彦に対する好意の実態は、自分の日常生活に支障を来しそうなほどハードなヲタ趣味を受け入れてくれるから。相当の包容力かマゾヒズムがないと相手できないよ。でもねえ、コスエッチOKな女の子と別れるのは、もったいないんだよなあ……うん。
(文/ビーラー・ホラ)

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