リアリティがケタ違い!“その道の専門家”が描いた話題のマンガ3選

2015.01.02

 さる2014年10月、人気マンガ『マンガで分かる心療内科』のアニメ化が発表された。アニメ版のタイトルは『アニメで分かる心療内科』で、今年2月からWebアニメとして配信スタートする予定(http://mental-anime.jp/)だという。この作品は累計300万部を超えるという原作の人気もさることながら、現役の精神科医が原作者を務めるのが大きな特徴だ。

 マンガに限らずアニメ、ラノベも同様だが、近年はファンの側にも知識が増え、うかつな描写をすれば「作者は勉強不足」「物理法則がおかしいwww」などとネット掲示板で嘲笑される事態がしばしば見られる。そんなご時世でも圧倒的な説得力を持つのが、“その道の専門家”が関わった作品と言えるだろう。今回は取材協力や監修レベルではなく、原作者あるいは作画まで本人がこなしてしまった“専門家のマンガ”から、話題の3タイトルをピックアップして紹介したい。

■原作者は現役精神科医!『マンガで分かる心療内科』

マンガで分かる心療内科第1巻(少年画報社)

 原作者は「ゆうメンタルクリニック」代表の精神科医・ゆうきゆう氏。東大医学部卒、しかも漫画研究会の部長も務めていたという異色の経歴である。

 単行本1巻カバーに記されたキャッチフレーズ「心療内科の病気のすべてを笑いながら学べる!」が示すとおり、明るいギャグを織り交ぜながら毎回さまざまなテーマを解説している。扱うテーマは認知症・うつといった比較的シリアスなものから、ロリコン(ペドフィリア)・露出症・フェティシズム・EDまで多彩だ。

 主な進行役のキャラクターは2名。精神科医の心内 療と、サイドテールの美人看護師・官越 あすな。豊富な事例を挙げながら療がテーマについて精神医学の見地から解説し、あすなが執拗にボケ&セクハラを仕掛けるのがお約束だ。専門家が手がけるだけあって内容は非常に詳しく「EDの患者には“普段の興奮材料のほとんどが二次元のイラストである”人が目立つ」「アメリカの診断基準では“13歳以下の少女にキスしてもらう”こともペドフィリアに該当しない」など、オタク的に少なからず気になる(?)ネタも多い。

 こうした精神医学的な情報は文章だけよりもイラストが付くと格段にわかりやすくなることもあり、マンガとの親和性は高い。アニメ版でもどこまで原作テイストを生かしながらノーブレーキできわどいネタを連発してくれるかに注目だ。

■原作者は(元)公邸料理人!『大使閣下の料理人』

大使閣下の料理人第1巻(講談社)

 2006年まで「週刊モーニング」(講談社)で連載された作品で、2015年1月3日に新春ドラマスペシャルとして実写版の放送が決まっている(http://www.fujitv.co.jp/taishikakka/)。原作者の西村ミツル氏はブルネイ・ベトナムで日本大使館の公邸料理人を務めていた、これまた異色の経歴の持ち主。近年では『信長のシェフ』(芳文社)原作者といえばわかりやすいだろう。

 主人公の大沢 公は、日本を飛び出した若きフレンチシェフ。外交における“料理の威力”を熟知している在ベトナム大使の倉木に従い、その恵まれた技量をいかんなく発揮する。ささいなミスからこじれてしまった各国間の関係修復に、また日本に対し謀略を仕掛ける企みを防ぐため、さらには国家のメンツをかけた公邸料理人同士の腕比べ対決まで……一介の料理人に過ぎないはずの公が各国の要人を向こうにまわし、縦横無尽の活躍を見せるシーンは痛快。また、外交に携わる人たちが普段どんなことを考え、何に苦労しているかといった“外交のウラ側”を詳しく知るにもすぐれた副読本になり得る。これも外交の最前線で腕を振るってきた原作者の経験あってのことだろう。

 西村ミツル氏が手がけるマンガ作品は「主人公がフレンチ料理人」「料理によって外交を行なう」という2点が一貫している。『信長のシェフ』は料理の力を敵勢力の切り崩しや脅迫に使う“攻めの料理外交”、対して『大使閣下の料理人』は国家間のバランスを調整する“守りの料理外交”といった感じだ。

 新春のドラマ版では櫻井翔さんが主人公を演じ、ヒロイン役に剛力彩芽さんが抜擢されている。剛力さんが演じるのは原作に登場しないオリジナルキャラということもあり、ネット上では賛否が分かれそうだ。しかし『大使閣下の料理人』という作品自体が非常に高いポテンシャルを秘めているため、この放送をきっかけにして原作に触れてくれるファンが増えることを願いたい。

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