まったく儲かっている気がしない…!? コミケに暗躍する“転売ヤー”の仕分け現場を潜入ルポ

1412_tenbai.jpgごった返す秋葉原。(写真はイメージ画像です)

 企業ブースで各社が競うように販売するコミケ限定のグッズ。さまざまな同人誌。それらの中には、手に入れるために朝一番から並ばないといけないものも無数に存在する。だが、さまざまな手段で、レアグッズや同人誌を手に入れ、所有欲を満たした上に利ざやを稼ぐ人々もいるという。今回、取材班はコミケの中で暗躍する転売屋こと“転売ヤー”の姿を追った。

 コミケ初日終了後、秋葉原にほど近い高級マンションの一室に次々と荷物を抱えた男たちが吸い込まれていく。山のような紙袋を抱える者もいれば、大きな段ボールを運び込む者もいる。あるオタク業界関係者が、自分の会社の登記先にしているというマンションの部屋では、山のようなグッズや同人誌が並べられ、仕分け作業が行われている。彼らこそが“転売ヤー”と呼ばれる人々だ。

 コミケ初日といえば、多くの参加者が企業ブースの限定グッズを求めて始発から東京ビッグサイトに向かう日。チケットを手に入れた人々によって、開場前からすでに長蛇の列をつくる。それでも、販売数は一人あたり2とか3とか、数が制限される。買い損ねた参加者は「明日こそは」と、二日目も三日目も必死に東京ビッグサイトを目指すのだ。

 仕分けされているのは、そうした希少なグッズ。それも10、20と、ここで製造か販売でもしているのかと思うほどの数である。仕分けをしていた男は言う。

「どんなに数が制限されるグッズでも、手に入らないものはそんなにないですよ」

 必死で並んでも買えないグッズを大量に手に入れる方法。それは、ひとえに人間関係に尽きる。人気の企業あるいは同人サークルでも、友人知人に対する取り置き枠というものは必ず存在している。

 そうした関係性があれば、コミケ開催前から「今回はいくつ必要?」と、企業やサークルのほうから聞いてくる。さすがに「100セット欲しい」なんて要望は聞いてもらえないが「10や20くらいなら、どうにでもなる」(前出の男)という。

“転売ヤー”というと、買い占めた挙げ句に高値で売りつけ荒稼ぎをしているというイメージがあるだろう。ところが、仕分けに参加していた彼らは「昔ならいざしらず荒稼ぎなんてできない」と、いう。そして「そもそも、荒稼ぎをする気もない」と。

 彼らがグッズや同人誌を手に入れる第一の目的は、転売で利ざやを稼ぐことではない。自分も欲しくてたまらないレアなグッズや同人誌を効率的に手に入れることだ。転売するのは、あくまで余技の部分なのだ。

 この日、賑わう秋葉原の某店への買い取りの道中で、男は言った。

「企業はコミケで売れたグッズを後から再販することも多いんです。だから、オークションでも高値はつかないし、店舗は買い叩いてくる。転売しても利ざやはたかがしれてますよ」(同)

 その言葉が証明する通り、グッズを持ち込んだ某店が提示した買い取り金額は、販売価格から1~2割上乗せした程度。中には販売価格以下、原価割れしたものもあった。結局、この日の儲けは仕分けに参加していた5人の飲み代程度に過ぎなかった。

 こうした仕分け作業は、コミケ期間中から都内のあちこちで行われている。有明周辺のホテルの一室を使うものもあれば、コミケ終了後に貸し会議室でやるグループもあるという。コミケ「4日目」と呼ばれる閉会の翌日に同人誌書店で長蛇の列ができている一方で、効率的に自分の欲しいものをすべて入手している人々もいるのだ。

 この日出会った男の言葉は印象深い。「コミケに10年も通っていれば、グッズや同人誌を取り置きや、サークルチケットを融通してもらえる仲間はできるはずです。“並んでも買えなかった”と嘆く人は、相当のコミュ障なんじゃないでしょうか」(同)

人間関係を構築し、オタ友と協力してお目当てのブツを手に入れる。“転売”という行為さえなければ、ありふれた光景だろう。さらに男によれば、そのためにコミケスタッフに紛れ込もうとする輩もいるのだという。コミケスタッフになることで幅を利かせて利益を得られると目論むのだ。しかし、ある大手企業の関係者は言う。

「準備で忙しい開場前に、突然来て“スタッフですけど、取り置きを……”なんて言う空気の読めないヤツもいるんですよ。そんなヤツは無視するに限ります」

 結局は普段からの人間関係。そのための交際費を考えれば、転売は決して美味しい商売ではない。重要なのは、列に並ばなくても自分の欲しいものが必ず手に入るという安心感なのだ。
(取材・文/神田川 濁流)

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