殻を破り、未来を彩る。“始まり”とはつまり、そういうこと。 武藤彩未ワンマンライブ[OWARI WA HAJIMARI]レポ

2014.12.28

 虹色のワンピース。キラキラに光る無数の傘。鳴り止まない声援。その煌めきに意識が遠のく。夢の中で迷子になる。でも、その距離の近さで我に帰る。その声の透明感で正気に戻る。たった一人の存在が、それを取り囲むすべてが、未来を鮮やかに彩っていく。ここはソロアイドル・武藤彩未のワンマンライブ[OWARI WA HAJIMARI]。おかしい。会場の赤坂BLITZは何度も来た事があるのに、見覚えがない。景色が違う。約70本に及ぶ白い傘がステージ上に吊るされて、何かが始まる予感しかない。まるで別世界に誘われたようなステージセットに息を呑む。その数秒後、その美しさに息を引き取る。とはいえ、息を吹き返す。永遠から瞬間まで息を弾ませるのだ。

『ナウシカREMIX』に合わせて手拍子が鳴り、バンドメンバーの後に武藤彩未が登場。栗色のボブウィッグを装い、ビニール素材の白いドレスが光で乱反射する。眩しい。これはきっと照明のせいじゃない。ステージ中央に立つその人の煌めきのせいだろう。早い話、かわいすぎる。

「赤坂BLITZ、盛り上がっていくよ!」

 一曲目の「A.Y.M.」からテンションは最高潮。カラフルにライティングされるステージに、バンド編成の迫力が上乗せされる。nishi-ken(Key)、楠瀬タクヤ(Dr)、SHINJI OHMURA(G)の援護射撃が客席の奥の奥まで届き、生音を武器にその向こう側まで突き進んでいく。

「一年間のいいとこ取りの、集大成のライブです。生演奏、すごくない? 今日は皆さんも声出して、お互い遠慮なしでいきましょう!」

 今日のステージは新曲がいくつも用意されていた。新曲「Doki Doki」は一度聴いたら忘れられないメロディがループし、その後も脳内ループを余儀なくさせるキャッチーな歌。「宙」でいくつものミラーボールが会場内を照らす。その歌声は透き通り、爽やか。でも、確実に力強く心に響いてくる。

 傘に投影されるプロジェクションマッピングやレーザービームまで、曲の世界観をこれでもかと視覚化する今回のライブ。武藤本人のポテンシャルはもちろんだが、それを十二分に発揮するための数々のミラクルでクリエイティブな演出に目を見張る。

 それはまさに新曲「ミラクリエイション」のタイトル通り。虹色のワンピースに着替えた武藤を迎えるのは、まるでパレードのように楽しくかつ壮大なイントロ。80年代アイドルのようにどこか懐かしいのに、すべてが新しい。ステージ後方、開かれた傘の8面がそれぞれグラデーションを作る。傘ってこんなに美しくなれるんだ。と、憂鬱な雨の日でも希望を見い出せるかもしれない。

 最後の鼻を押さえる振り付けについて、「これ、何かわかりましたか?」と武藤が問うと、客席から「ピエロ!」と回答が。「正解!」と喜ぶ武藤。MIKIKO氏による振り付けは彼女の魅力をより拡大させて、夢の世界へと放り込んでくれる。

 とはいえ、その直後になぜか高校生活最後の期末テストの結果を発表。一気に現実世界に引き戻す。公民が81点、国語表現が85点、歴史が87点、英語が88点、家庭科が91点、ライティングが92点といずれも高得点。点数が告げられるたびにバンドメンバーが演奏で大袈裟に盛り上げる。「『ツムツム』(『LINE:ディズニー ツムツム』)をやってなかったらもっと点数がよかったのに……」会場は和みムードに。普通の高校生っぽいエピソードが披露された後でも、やっぱりアイドルの中のアイドル。新曲「パラレルワールド」から「彩りの夏」まで、一瞬の油断も許されない。

編集部オススメ記事

注目のインタビュー記事

人気記事ランキング