花澤香菜『スッキリ!!』生出演から見えた、“声優”というムラ社会

2014.12.26

 数日前から話題を集めていたが、今月25日、日本テレビ朝の情報バラエティ番組『スッキリ!!』へ人気声優・花澤香菜が出演。8分弱の出演の中で、発売されたばかりの新曲「こきゅうとす」が披露され、視聴者からも好評を博した。

 花澤の歌唱力が、彼女の特徴的な声質に裏打ちされ、多くの人を魅了するものであることは間違いない。けれども短い出演時間の中で、気になる部分が拭いきれなかった。それは、司会の加藤浩次をはじめ、コメンテーターのテリー伊藤らレギュラー出演陣の花澤に対する態度だ。これまでも『スッキリ!!』には、国内外のゲストが出演する機会はあった。そうした中で、今回の花澤へのレギュラー出演陣の対応は、来日した海外の歌手のそれに近かったように感じる。

 つまりは、あくまで別の世界から来たお客様扱いなのである。実際、ネット上での視聴者の反応としては、花澤の地上波出演を言祝ぐものが多いが、一方で「(番組MCの)加藤必死にフォローしてる」や「(番組の出演者)全員必死に(花澤を)持ち上げてる」、「ハラハラする」といった意見も散見された。これは、現在の声優業界と呼ばれるものが、社会の中でどのような認識を示しているかを端的に示しているといえるだろう。わずかな時間の中で花澤は歌を披露し、彼女がいかに人気を得ているかは説明された。けれども、後半のトークでは出演陣が口々に彼女を褒め称えるのみで、彼女自身が自分の魅力を示す姿はまったく見られなかったのである。

 その責任は花澤にはない。反射神経だけの話芸が求められる“テレビ”という場面がどういうものなのかをレクチャーできなかった彼女の周囲にこそ、責任は所在する。でも、そうした責任を感じている者はいないだろう。なぜなら、「できない」のではなく、「する必要はない」というのが声優をアイドル売りする人々の常識だからである。

 着せ替え人形のように、言うままに踊らせているだけで人気を得ることができる。アイドル声優というのは、そういうムラの中の存在だからである。限られたムラの中で芸を売っていれば稼ぐことができる。その意識がある限り、声優の地上波への出演が椿事として扱われる事例はなくなることはないだろう。

 年末恒例のNHK紅白歌合戦に声優・水樹奈々が出演するようになって6年を迎えたが、いまだに彼女に続く声優は出て来ない。その理由はまさにここにある。最初から限界値が決まっている芸になど、なんの魅力もない。
(文/昼間 たかし)

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