Kindleでも読める30年前の名作プレイバック 第22回

鳥山明の作品がマンガ界に及ぼした影響は計り知れない!『Dr.スランプ』から『ドラゴンボール』が誕生するまで

『Dr.スランプ』で好きな1話を挙げろと言われたら本当に迷ってしまうのだが……あえて挙げるのならKindle版の最終巻にあたる9巻に収録されていた『駆けずりまわる青春の巻』だろうか。連載終了前の、かなり後半の回である。

 チャカボ王国の監禁を逃れ、飛行機で逃走中のナババ王国のカスマット姫が、ペンギン村に墜落してしまう。則巻家の隣に引っ越してきた中国人一家のひとり息子摘突詰(つんつくつん)はレギュラーキャラクターの木緑あかねとデート中だったが、慌ててカスマット姫を救出する。しかし、カスマット姫を追いかけてきたチャカボ王国の悪漢ビスナによって、偶然にもカスカット姫と瓜二つだった木緑あかねが間違えてさらわれてしまう。そこで、あかねを取り戻すために、東奔西走する摘突詰……という内容だ。

 全6話という、ショートギャグが基本の『Dr.スランプ』の中では異例の長さ。ギャグは薄めで、ストーリーマンガ的な展開をするお話だった。

『Dr.スランプ』の中では、脇役の摘突詰を主役にしているのが面白い。摘突詰は中国拳法の使い手であり、当たり前に強い(アラレやガッちゃんたちは強すぎる)。中国拳法の使い手が冒険する話……というと、どこかで聞いたことがあるような気がするだろう。そう、今読むと、とてもドラゴンボールを予感させる物語なのだ。

 冷酷な敵キャラ、恐ろしく強い魔神、怒って覚醒……などなど、『ドラゴンボール』でも見られる要素が詰まっているのだ。

 当時、「鳥山明はいずれアクションストーリーマンガも描くんだ!! もっと長いの読みてえ~」と思った覚えがある。素晴らしく完成度の高い1本だと思う。

 最近の若い人の中には、『Dr.スランプ』を読んでいない人も増えているという。

『Dr.スランプ』の連載終了から30年、『Dr.スランプ』の次の作品『ドラゴンボール』が終了してからも20年経とうとしている。時代的には読まれなくなって当たり前なのだが、しかしまだまだ生きているマンガである。

 イラストやマンガを学んでいる人はもちろん、そうでない人にもぜひぜひ読んで欲しい作品なのである。

●村田らむ(むらた・らむ)
1972年、愛知県生まれ。ルポライター、イラストレーター。ホームレス、新興宗教、犯罪などをテーマに、潜入取材や体験取材によるルポルタージュを数多く発表する。近著に、『裏仕事師 儲けのからくり』(12年、三才ブックス)『ホームレス大博覧会』(13年、鹿砦社)など。近著に、マンガ家の北上諭志との共著『デビルズ・ダンディ・ドッグス』(太田出版)、『ゴミ屋敷奮闘記』(鹿砦社)。
●公式ブログ<http://ameblo.jp/rumrumrumrum/

鳥山明の作品がマンガ界に及ぼした影響は計り知れない!『Dr.スランプ』から『ドラゴンボール』が誕生するまでのページです。おたぽるは、人気連載マンガ&ラノベ作品レビュー連載の最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

- -

人気記事ランキング

XLサイズ……
XLサイズって想像できないだけど!!