炎上した“鼻血シーン”はどう変わった? 修正された『美味しんぼ』最新単行本を読む

1412_oishinbo.jpg美味しんぼ第111巻(小学館)

 2014年4~5月にかけ、事故後の福島第一原発を取材で訪れた主人公たちが“鼻血”を出す描写などで話題となったグルメマンガ『美味しんぼ』(小学館)。それに加えて「今の福島に住んではいけない」といったセリフの数々が問題視され、メディアはこぞって報道。閣僚までも『美味しんぼ』に言及するという異例の展開を見せてから半年あまりが経過し、ついにそのエピソードを収録した単行本111巻――「福島の真実編(下)」が12月10日に発売となった。

 今回は雑誌掲載時とどのように描写が変わったかを中心に、この『美味しんぼ』最新巻をレビューしてみたい。

■単行本で修正された主なセリフ

 前巻にあたる110巻から全24エピソードで描かれる「福島の真実編」。作中では福島第一原発の事故から7カ月たった2011年10月~2013年4月にかけ、主人公の山岡士郎、その父親である海原雄山たちが福島県へ“真実”を探りに行く。山岡たちは当然架空のキャラクターだが、取材先で出会う人々は実在の人物が多く混在している。

 さて、実際に大きな批判を受けた描写が、「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)連載時と単行本収録時でどう変化したのか、主要なセリフを以下に列挙する。

1.鼻血が出た山岡を診察した医師のセリフ

【連載】「ビッグコミックスピリッツ」(2014年22・23合併号)より。
福島の放射線とこの鼻血とは関連づける医学的知見がありません。

【単行本】
お話の様子からでは原発見学で鼻血が出るほどの線量を浴びたとは思えません。

2.上記の話を受けて山岡の返答

【連載】「ビッグコミックスピリッツ」(2014年22・23合併号)より。
うっかり関連づけたら大変ですよね。

【単行本】
原発内での外部被ばくが原因ではありませんね。

3.山岡たちの鼻血・疲労感を知った井戸川克隆氏(双葉町前町長)のセリフ

【連載】「ビッグコミックスピリッツ」(2014年22・23合併号)より。
福島では同じ症状の人が大勢いますよ。言わないだけです。

【単行本】
私が知るだけでも同じ症状の人が大勢いますよ。言わないだけです。

4.低線量被ばくと鼻血・疲労感の関連を説明された海原雄山のセリフ

【連載】「ビッグコミックスピリッツ」(2014年24号)より。
放射線の被害というと癌のことばかり取り沙汰されるが、放射線は人間の体のすべての部分に影響を与えるのだ。

【単行本】
放射線の被害というとガンのことばかり取り沙汰されるが、政府は体のあらゆる症状について予見を持たずに調査すべきだ。

5.自身が町議会で不信任を受けた時のことを話す井戸川氏のセリフ

【連載】「ビッグコミックスピリッツ」(2014年24号)より。
私はとにかく、今の福島に住んではいけないと言いたい。

【単行本】
私はとにかく、今の福島の外に出ろと言いたい。
(※ほかの箇所もこれに対応して「外に出るべき」と変更されている)

6.荒木田岳氏(福島大学准教授)のセリフ

【連載】「ビッグコミックスピリッツ」(2014年24号)より。
福島がもう取り返しのつかないまでに汚染された、と私は判断しています。

【単行本】
震災前の政府の基準に従えば、住んではいけない所に多くの人が住んでいる、それが福島県の現実です。

7.同じく、荒木田氏のセリフ

【連載】「ビッグコミックスピリッツ」(2014年24号)より。
福島を広域に除染して人が住めるようにするなんて、できないと私は思います。

【単行本】
福島のすべての地域を除染して、危険を完全に取り除くなんて、できないと私は思います。

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