CGWORLD2014 クリエイティブカンファレンス・レポート

公開前に制作費をほぼ回収!? アニメ『サンタ・カンパニー』のクラウドファンディング活用法

2014.12.20

「海外クラウドファンディングを利用したオリジナル作品の資金調達と展開手法」の様子。

 12月18日から短編アニメ『サンタ・カンパニー』の一般公開がスタートした。まずは横浜のブリリアショートショートシアターにて24日までの上映となる。期間中は総監督の糸曽賢志さんや主人公・ノエルを演じた藤村歩さんとのトークもあるが、併映作品には動画革命東京の支援作品として糸曽さんが監督した『コルボッコロ』であるのも見逃せない。

 この『サンタ・カンパニー』は10月の第27回東京国際映画祭で招待上映のほか、11月23日に文京学院大学本郷キャンパスにて開催された「CGWORLD2014 クリエイティブカンファレンス」にて「海外クラウドファンディングを利用したオリジナル作品の資金調達と展開手法」と題して糸曽さんが登壇し、どのように作品が制作されたのかを紹介していた。

『サンタ・カンパニー』の制作費はアメリカのクラウドファンディングサイト「Kickstarter」も活用し、昨年約756万円の支援額を得た。さらに今年は「アニメ制作の教科書・資料集プロジェクト」と題した『サンタ・カンパニー』教材化に関するプロジェクトで約279万円の追加支援を集め、計1000万円超の支援額となったことで注目を集めている。

 糸曽さんは最近、『NARUTO-ナルト-』(集英社)の連載が終了したことを導入として話を進め、自分のブランドを立ち上げたいと思った時に「今やってることを続けていきたいのか」、もしくは「これから新しいことをやりたいのか」のどちらかを選ばなければならなくなることを挙げた。これは、1回売れてしまうとそのブランドを貫き通さないとならないジレンマがあるからだ。皆が知ってるタイトルを手がけると、あまり突飛なことができない一方、演出家として名前が出る人の場合は、“尖ったことができる人”ということになり、どちらがいいのかという悩みだ。

 糸曽さん自身も学生時代にマンガ賞の受賞経験や掲載歴がある。それからゲーム会社に入社し、「商業作品で仕事をするとはどういうことか」を学んだ。フリーになってからは実写やアニメなど、色々な映像作品に関わった。糸曽さんはスタジオジブリで宮崎駿監督に師事していた時期もあるが、特にターニングポイントとなったのは、今敏監督の未完の遺作『夢みる機械』に演出で参加したことだった。今監督から「『夢みる機械』をなんとしてでも完成させてくれ」と言われたこともだが、「(糸曽くんは)何のために技術を蓄えてるの?」と聞かれたことも印象に残っているそうだ。

 その際に「僕はいつかオリジナル作品を作りたいなと思ってます。とりあえず『夢みる機械』が終わってから考えます」と答えると、今監督は「それいつなの? 『いつかいつか』って言ってるうちはやらないし、そう言ってる間に自分みたいに(ガンを発症とか)なったらどうするの?」と返された時に「考えなきゃいけなくなった」と言う。それから今監督に50くらいの企画を見せてダメ出しされていた中の1つ、「これだったら映画になるんじゃないの?」と言われたのが、今回の『サンタ・カンパニー』となる。

「現代において、サンタクロースを現実的に実現するにはどうしたらいいか?」というところから企画はスタート。クリスマス以外ではどうやって生活してるのか? あの膨大なプレゼントを1日でどうやって配るのか? そんな中で、サンタ部、プレゼント部、トナカイ部からなる部署を持つ大手企業という案ができた。「クリスマス」は、お客様への還元祭として子供たちにプレゼントを届けるという事業に位置づけられているという設定になった。

「企画を持って走り回っていれば、どこかがお金を出してくれるだろう」と思っていたが、100社くらい回ってもどこも出してくれる会社はなかった。単純に「オリジナルの作品は誰も知らないから売れない」という意見からだった。そこで、「まず小説を出そう」と出版社を回る際にも、ポプラ社から出た水嶋ヒロ(齋藤智裕名義)の小説が売れたことで上手いこと差し込めたとのこと。

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