アニメ業界人が語る、ひそひそ秘話 【第4回】

婚活なんかやってるヒマはない!? 『SHIROBAKO』を通して見る、アニメ制作現場で働くリアル“女子事情”

■アニメ業界の“女子力”は如何に!?

 どんな作品でも非常にかわいらしい外見で描写されるアニメ業界の女性キャラクター。言うまでもなく、そこには相当なデフォルメが入っています。『SHIROBAKO』に登場する女子たちのような人は、ごくごく少数だと思ってください。

 お化粧やおしゃれに気を遣える女性は少ないというか、すぐにその時間的・体力的余裕がなくなります。制作進行は毎日帰宅できるかできないか、風呂に入れるか入れないかというハードな職種ですから、最低限の服や小物チョイスにおしゃれを見いだすのが精一杯なのです。「毎日きっちり帰り、朝はメイクして出勤、スカートで仕事!」を続けられるような人は、ほぼ絶無と言っていいでしょう。

 アニメーターなどの作業スタッフは先述した通り千差万別な個性がありますから、おしゃれの方向性も多岐にわたります。気を遣えない女子は何歳になっても金欠学生のような格好をしています。年中シャツとジーパン、袖の長さと羽織るものが変わるだけといった感じです。逆に、おしゃれな人はいくらでもおしゃれです。カジュアル系、ビジュアル系、パンキッシュからシックで大人な感じまで……クリエイターとしての美的センスがファッションにも反映されるパターンですね。

 次に、気になる人も多いであろう“アニメ女子の恋愛・結婚事情”について語りましょう。業界の外に恋愛対象を求めたり、積極的に婚活に励むという女性は多くない印象です。まず、合コンなどに参加する時間がほとんどありません。ちょっと先の予定が組めない、組んでもスケジュールの都合でドタキャン……「ヒマさえあれば出会いを求めて」のヒマがないのです。

 アニメ業界全体が超夜型のサイクルですから、業界外の人と出会える機会がそもそも多くありません。出会ったとしても同じ理由で「こんど食事でもどうですか?」が、なかなか実現できません。基本的に“激務&就業時間が世間とズレている”ため、職場外での恋愛は実りにくいのが実情と言えます。

 そのため未婚率は高く、そもそも“いい男を捕まえるため、結婚までの腰掛け”としてアニメ業界を選ぶ女性など基本的にいないわけで、結婚願望自体が希薄な女性が一般より多いと筆者は感じます。男性は男性で、薄給&不安定&家に帰れない……と、これまた具体的に結婚をイメージしにくい業界です。なので、あまり大きな声では言えませんが「結婚したいから辞める」「転職してやっと結婚できた」人は男女ともちょくちょく見かけます。

 こうした事情から、割合的に高くなるのは職場内の恋愛と結婚。業界に異性(女性)が進出してくれば、すなわち出会いの場が増えますし、定時のあってないような業界の特殊な事情もスタッフ同士なら理解してくれます。筆者の知るだけでも「制作×仕上げ」「制作×撮影」「アニメーター×制作」「アニメーター×アニメーター」「3D×仕上げ」のカップルがいますし、結婚した人たちもいます。このあたりは男性ばかり、女性ばかりの仕事に比べると“普通”と言えるのかもしれませんね。

【まとめ】
 まとめると、制作現場は「昔に比べて女性が働きやすくなったが、一般的に言えばまだまだ。ぶっちゃけブラック」だと思います。『SHIROBAKO』はそのあたりの描写がリアルで、かつ娯楽作品として楽しめるぎりぎりのデフォルメが施された見事な出来だと感じています。

 業界の人間から見て唯一リアリティの面で苦言を呈するとすれば、それは「主人公・宮森ちゃんが優秀すぎる」ということ。制作進行を担当するのが1・2本目の新人が、あれほどアニメの作り方を深く理解し、目端が利いてスタッフの信頼も篤いというのは、まずありえないでしょう。制作進行を主役に据え、その目を通したドタバタコメディを描きながら、実は「制作進行とはこうあってほしい、頼むからこういうふうに育ってくれ!」というスタッフの絶叫が込められているのではないか――筆者はそう邪推してしまうのです。

■安康頂一
 仮名。都内某アニメスタジオに制作進行として勤務、現場の辛酸をベロベロ舐め尽くしたのち、同業別職種に転じる。現在はギョーカイの深海底でひっそりとコンテンツの明かりをともす、その日暮らしのチョウチンアンコウ。

三鷹の森ジブリ美術館ファンブック―迷子になろうよ、いっしょに。 (ロマンアルバム)

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宮崎駿さんも、仕上げ女性と作画男性の出会いが少なくなったって嘆いてました。

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