こんなオタクヒロインがモテないはずがない!? 隠れ特撮オタクのOLを描いた『トクサツガガガ』

2014.12.17

トクサツガガガ第1巻(小学館)

 きっと、世の中にはこうした生き様をしている人が多いから共感を呼ぶのだろう。隠れ特撮オタクの26歳OLを描き話題を呼んでいる、丹羽庭氏の『トクサツガガガ』(小学館)が人気を博す理由は、きっとそうに違いない。

 オビではマンガ家・木尾士目氏が「仲村さんの一歩一歩が僕等の道標です」と、二ノ宮知子氏が「尻がいいって言えない気持ち、わかる……。沁みるわ~」と絶賛する、この作品。まず思い出されるのは、同じく26歳の隠れコスプレイヤーの日常を描いたマンガ『コンプレックス・エイジ』(講談社)である。『コンプレックス・エイジ』には、なんともいえない独特の暗さがあった。なにせ、コスプレイヤーは「年齢の壁」を考えることもある趣味だからである。その影の部分が独特の萌えを生んでいたわけだが、対する『トクサツガガガ』のヒロインは、とにかく明るい。

 ヒロインの仲村叶は、オタバレが怖くてコソコソしながら生きている。彼氏がいた時も部屋に入れたことがないというから、隠し方が尋常ではない。何を歌えばよいか迷う「一般人」とのカラオケでは、“子供の頃に覚えた”と詳しくないアピールで誤魔化して特撮主題歌を歌う。ゆるキャラに混ぜて特撮キャラのアクセサリーをつける。ファストフードの子供向けセットは量が少なくて良いとかうそぶいて、オマケをゲット……。

 そうした楽しいオタク生活のためにランチ代をケチって弁当を作れば、「女子力が高い」と同僚から賞讃されたりと、大変な日々だ。

 各話の中で、ピンチに陥った仲村さんの前にたびたび現れるのが、大好きな特撮ヒーロー・エマージェイソンの幻影だ。前述のカラオケシーンでは、知っている歌を歌えばオタバレしてしまうと困惑する仲村さんに「諦めてはいけない! 己の生活を守るため正体を隠すのは「悪」ではない」と、励まし(?)の言葉をたむける。いかにすべきか迷いに陥った時に幻影が浮かぶ展開。制作するジオラマに迷ったとき、主人公が妄想しまくってアイデアを導き出すプラモバトルマンガ『3D甲子園 プラコン大作』(小学館)のような、少年マンガのノリなのである。

 そう、ヒロインの心も「少年のまま」であるのみならず、このマンガの実態が、ピンチを努力で乗り越える少年マンガなのである。だからこそ、この作品は明るく楽しく読めるのだ。

 いずれにしても、作中の仲村さんの立ち振る舞いは“萌え”である。そもそも、にわかヲタがあふれる昨今に、こんなにディープで詳しい女ヲタは珍しい。なので、仲村さんはある種の男性から引く手あまただと思うのだが、どうだろうか?
(文/ビーラー・ホラ)

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