CGWORLD2014 クリエイティブカンファレンス・レポート

「CG業界が下請けから脱却してきた」各CG会社の代表が語った未来の展望

■超解像度問題の解決はリアルタイム・レンダリングにあり!?

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 続くテーマ「これからCG・VFXの制作現場が求められる課題とは?」では、やはり超解像技術である4K問題が中心になっていた。今後も際限なく上がり続けていく解像度にどう対応するかが課題となってくる。

サンジゲン・松浦「4Kはこないだソニーのブラビアの関係でインタビュー受けたんだけど……それはHD(2K)の映像をアップコンバートみたいなことしてて綺麗だった。『蒼き鋼のアルペジオ』を見ながら喋ったけど、4Kなんて正直作りたくない。面積4倍とか嫌じゃない? HDでも綺麗だから、意味あんのかなと思って。」

wise・尾小山「僕は今16Kをやっていて、それ(16K)も1カメで撮ってるんだけど。コンテンツを作る時に、もともとHDに変わる時も作業量も倍になって大変だった。4Kの場合は、ハードウェアでの補完が今までとレベルが違う。家電屋で4Kのテレビで流れてるのって、映像はブルーレイ。つまりブルーレイの映像をアプコン(アップコンバート)して4Kのデモをやっている。フルでハードディスクにつながってるのもあるんだけど、僕ら(が制作する映像)は2Kでいい。16K(の撮影)はちょっと大変だった。撮影のほうでソニーの超解像度現像っていうやり方で現像すると、何故か2Kで撮ってる映像が16Kになってしまう。怪しい。本当にそうなのかって思っちゃう」

サンジゲン・松浦「(『アルペジオ』でも)背景は手描きが多いけど、星とかパーティクルとか撮影処理が入ってるのは(4Kでも)綺麗。細かい動きでも目に入ってくるので、奥行き感を感じる。リアルタイム(レンダリング)なら解像度に依存しないから期待してる」

 リアルタイムレンダリングとは字義通り、その都度レンダリング【註:データを映像・画像・音声などに変換すること】を行うということである。聞きなれない人もいるかも知れないが、例えば、ゲームでの操作キャラクターの視点映像などは、その動きに合わせて画像が生成される。このように、ゲームには欠かせない技術なので、実は一般的にも馴染みのある技術なのだ(これに対し、映像全般は予めレンダリングされており、プリレンダリングと呼ばれる)。上がり続ける解像度を乗り切るカギは、こうしたリアルタイムレンダリングが握っているようだ。

wise・尾小山「16Kだとグラフィックボードとかハードウェアの話も出てきてしまうんで、そことのせめぎあいかなという気はする。これ(4K)以上の解像度の話になると作り手だけの話じゃなくなるけど、HDの時みたいに作り手だけに負荷がかかることにはならないかなって思う」

神風動画・水崎「(4Kについては)メリット無いかなと思うけど、現物を見ると『これで作ってみたい』って不思議と思っちゃう。作れるかというと、キツいけど。演出で考えなきゃいけないこととしては、モブキャラが手抜きできない。モブキャラはのっぺらぼうでいいのに、8Kとかになると顔とか見えるし……。

 カット割りやドラマの運び方といった演出自体には関係ないかな? 映像文法は変わるかもだけど。松浦さんも言ったけど、リアルタイムにしていかないと、伸びゆく解像度に対して毎回レンダリングしてられない。僕らが対応するよりは、(リアルタイムと常に向き合っている)ゲーム会社と仲良くしたほうがいいんじゃないか」

 この件では人材育成や業界の地位にも話が及んだ。リアルタイム技術などによって、分業された仕事が効率化されていく一方、業界ではジェネラリストが望まれているという話が展開された。

PPI・塩田「要求されるコンテンツのクオリティーが上がってくのと同時にマーケットが広がればいいけど、(マーケットが)広がるのは後なので制作費がキツくなってくる。リアルタイムの技術でリニア(直線的)なアニメを作るにしても、早めにプランニングして最終成果物を決め込んで作る時間を相対的に増やすと。流通の面もそうだけど、制作コストの中でリアルタイムを効果的に使っていくのかな。ゲーム系の案件で(PPIは)リアルタイムにも首を突っ込んでるけど、“作るということ”に対するカルチャーが違いすぎてすごく窮屈。3DCGからアニメの制作に寄っていく時に感じた窮屈さも相当あったし今もあるけど、それ以上に窮屈というか……すり合わせが必要。(アニメとゲームの)双方が歩み寄るというか、作り方の技術もなんだけど、メンタリティーとかワークフローで一悶着あるなと」

wise・尾小山「作る人が活性化するんじゃないか。活性が高まったらCGアーティスト以外の人も参入する。CG業界って人が足りなかったり優秀な人が捕まらないっていうけど、そういうところに別の人が入ってきやすくなる。写真でフィルムからデジタルに変わって撮る人が増えた、みたいなことが起こるといい」

神風動画・水崎「CGでセルアニメ表現ができるかもね、といったことがだいぶ浸透した時に、CGから入るアニメーターが増えた。手描きのアニメーターが減りつつある中で『危ない!』と思った時に(アニメーターを)補い始めてて」

アニマ・笹原「ウチはまだ4Kは作業としてはやってなくてどうしようかという状況。ホントに2Kくらいで止まってくれたらなと。エフェクターやコンポジッターの層が薄い会社なので大変」

サンジゲン・松浦「ウチは2Dの会社もあるから、コンポジッター不足はない。むしろ社内に撮影部を作ったけど、そこで3Dをやらせようとして2Dの作画を減らしてる。エフェクトはどこ(の部署)がやるかは決めてない。アニメーターに近しい人がやる」

神風動画・水崎「アニメのほうだと、コンポジット(合成)から逆算して作ろうと考える。背景美術置いて作画置いて、CGにしようかとか」

PPI・塩田「幸いCGが使われる局面が増えてきてプロジェクトが拡大してる中で、それを全体的に俯瞰して取り仕切る人材が育ち切ってないのが最大の問題。歴史がないから仕方ないけど。ウチは完全分業制で、個々のモデルとかリグとかアニメーションとかは効率化とか体系化はできてるけど、デカいものを俯瞰して切り分けて部門化すると、それぞれの利害関係が最大化してしまう。リアルタイム技術が入ってきたら、レイアウトを切るとかカメラを決めるとかは凄いスピードでできると思う。その両極に行くんじゃないか」

サンジゲン・松浦「僕も分業については考えてて、そんな中でまたジェネラリストが求められるようになった。俯瞰で見る人としては、CGディレクターに演出の勉強をさせようとか。もちろん望む望まないは才能の問題もあるけど、そういう教育も必要かなと」

神風動画・水崎「ジェネラリストの求人も増えてきてるのを見ると、CG業界が下請けから脱却してきたのかなと感じてすごく嬉しい。(神風動画は)アニメスタジオから始めたけど、CGは一番最後になんとかする尻拭いをする役みたいだったのに、かなりの地位を獲得してて、『継続は力』かなって」

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