Kindleでも読める30年前の名作プレイバック 第21回

『三つ目がとおる』で手塚治虫が描いた写楽の極悪非道さと和登さんのエロさはやっぱりすごかった!

2014.12.07

―今から30年前以上前、そう僕らが子どもだったあの頃に読みふけったマンガたちを、みなさんは覚えていますか? ここでは、電子書籍で蘇るあの名作を、振り返っていきましょう!

(イラスト/村田らむ)

「おたぽる」の別の企画で、宝塚市立手塚治虫記念館に行ってきた。館内には、自由に手塚治虫の作品を読めるコーナーがある。そこで『手塚治虫全集』の黒を基調にした重厚感のあるデザインを見て、とても懐かしい気持ちになった。

 今ではこうして、懐かしのマンガレビューなんて書かせていただいているが、実は小学校低学年の頃、僕の家では「マンガ読むの禁止令」が敷かれていた。父親が

「マンガなんて読んでいたらバカになる」

という、いかにも昭和な、古〜い考えの人だったのだ。しかも僕はひとりっ子で病弱だったため、兄弟や友達からマンガを借りるという手段すら封じられていた。

 ただし、例外があった。学研から発売されていた『ひみつシリーズ』と手塚治虫だけは読んでも良いことになっていたのだ。母に図書館に連れて行ってもらい、『手塚治虫全集』を読んだ。そこで出会ったのが、『三つ目がとおる』である。もちろん『ブラックジャック』『火の鳥』『どろろ』など、さまざまな傑作と出会ったが、『三つ目がとおる』はなぜか、特に夢中になって読んだのを覚えている。

 当時は全集なのだから、当然古い本だとばかり思っていたのだが、『三つ目がとおる』の連載期間は、1974年から1978年。僕が1972年生まれだから、連載終了間際は出会ったことになる。

『手塚治虫全集』で『三つ目がとおる』を読むと、途中から急にエピソードが始まる。そして途中で1話に戻るという構成になっている。ずっと、「なぜだろう?」と思っていたのだが、実はコミックが途中まで出たところで、『手塚治虫全集』の出版が始まったらしい。途中まで出ていたコミックの発売は中止して、『手塚治虫全集』に掲載することになった。そのため、『手塚治虫全集』の1巻は、コミックスの7巻に相当するらしい。

 今だったら、コミックはコミックで最後まで出し切った後に、『手塚治虫全集』に掲載すると思うが。まあ当時は当時の事情があったのだろう。

 ……と、前置きが長くなったけれど、手塚治虫記念館で久しぶりに『三つ目がとおる』を読んだわけである。そして、やっぱり面白かった。ただ、あまり時間がなくて最後まで読めなかった。なので、Kindle版をダウンロードして読み返してみた。
 
 『三つ目がとおる』の主人公は、写楽保介。文字通り三つ目で、デコに丸い目がある。普段は大きなバッテンの絆創膏で目を隠している。目が隠れていると知能はおさえられ、無邪気な幼児みたいなキャラクターだ。しかし絆創膏を外すと、人間をはるかに超越した知能を持ち、超能力も使うことができる。だったら「普段から外しておけばいい」という話だが、めったに外さない。

 それは絆創膏を外した状態の写楽が、極悪非道だからである。そもそも写楽は人間ではないし、人間の生命もどうでも良いと思っている。作中でも、直接的描写は少ないものの、結構平気で人を殺す。また、殺さないまでも人間の脳みそをところてんにする(何も考えられず呆けた状態になる)機械を平気で使う。

 僕にとっては、ほぼ最初に出会ったマンガのキャラクターなので、素直に受け入れたが、少年マンガの主人公としては、かなり異質である。性根が悪党な少年マンガキャラクター自体、かなり少ないのだ。『デス・ノート』の主人公・夜神月はかなり歪んだ性格をしているが、根底部分には、人間社会が良くなるよう祈っている。『ドラゴンボール』のベジータか、『寄生獣』の後藤あたりが、性格的に近いキャラクターかもしれない。

 そして写楽保介は、とても孤独なキャラクターでもある。人間をはるかに凌駕する能力を持った三つ目族だが、すでに滅んでいる。母とは死に別れ天涯孤独だ。人類を滅ぼそうとする悪魔の顔と母を欲しがる子供の顔が同居している部分が、写楽保介の一番の魅力なのだと思う。

編集部オススメ記事

注目のインタビュー記事

人気記事ランキング