吉と出るか凶と出るか? 『モンハン』“萌えブラウザゲーム”化で気になるブランドの展望

 10周年を迎えた人気ハンティングアクションゲーム『モンスターハンター』(以下、『モンハン』)シリーズ。今年10月に最新作『MH4G』が発売され、すでに出荷数200万本突破がカプコンから発表されている。それに続いて11月27日、モンハンシリーズ初のブラウザゲームとなる『モンスターハンター メゼポルタ開拓記』が正式にサービス開始した。

 PVを見てすぐわかるのは、アニメ調のキャラクター絵を使って“萌え”を前面に押し出している点。これまでモンハンシリーズのキャラクターデザインは基本的に硬派・無骨なイメージで貫かれていたため、大幅な路線転換がネットユーザーの関心を引き寄せた。

『メゼポルタ開拓記』の世界観は本家シリーズとは若干異なり、オンライン専用の『MHF-G』が基礎になっている。とはいえ登場する武器種やモンスターはほぼ共通のため、『モンハン』経験者でも違和感はないだろう。本作はシミュレーションRPGで、アクションゲームではないが“モンスター素材を集めて強い武器を作る”“モンスターの部位破壊”など、随所に伝統あるモンハンの要素を見つけることができる。

 筆者も序盤をプレイしてみたところ、人気声優陣によるボイスを多用した萌えアニメちっくな第一印象には若干戸惑ったものの、モンハン本来の楽しさは守られていると感じた。本家ではクエスト制限時間があったが、マップ中のマス目を進んでいく『メゼポルタ開拓記』では残りターン数という概念で制限を設けているようだ。このターン数を超えないようマップ上を移動し、採掘したりターゲットとなるモンスターと戦闘したり、なかなか飽きさせない作りになっている。この記事執筆時点(12月4日時点)でDMMの人気ゲームランキングは『艦これ』に続く第2位。さすがモンハンブランドだけあって注目度は高いようだ。

 なおカプコンの辻本春弘社長は本作の正式サービス開始直前、『モンハン』シリーズをはじめ人気のゲームソフトを来年度からスマホ向けに配信していくと語ったことが報じられた。かつてはアーケードと家庭用ゲームで名を馳せてきたカプコンだが、今後はモンハンのみならず『ストリートファイター』『バイオハザード』などメジャータイトルを多数抱える強みを生かし、スマホ・ブラウザゲーム市場で新たなユーザー層の開拓に乗り出すつもりのようだ。これを報じた毎日新聞によれば「100億円程度の営業利益を3年以内に200億円に引き上げる」と目標もかなり強気。投資家からの反応は今のところ控えめで、このインタビュー記事が掲載されてからも同社の株価はほぼ横ばいとなっている。

『メゼポルタ開拓記』リリースをはじめ、モンハンブランドの拡大についてユーザーからの評価には賛否両論ある様子だ。新しいファン層の広がりを歓迎する声がある一方、課金者を偏重した(これはオンラインゲームの宿命だが)本作のゲームデザインを批判したり、昔ながらのストイックなイメージを脱却したことについて「そこまでして萌え厨に媚びたいか」と嫌悪感をあらわにした批判が出たり、なかなかネット上は騒がしい。

 また、カプコンは今年立て続けに『モンハン』の名を冠したコンテンツ2つを含め、多数のスマホ用アプリでサービス終了を発表していることから、同社のオンラインゲーム運営手腕そのものを疑問視する声も散見される。カプコン自身、2015年3月期第2四半期を報告するプレスリリースの中でモバイルコンテンツのヒット作に恵まれなかったことを認めており、ブランド拡大のためには“魅力あるコンテンツを企画・運営できる体制”のテコ入れが急務だろう。

 筆者個人としてはこうした動きを今のところ静観する構えだが、モンハンシリーズのファンとして気になるところがある。「ユーザーの裾野を広げるのはいいけど、本家シリーズの今後は大丈夫なの?」という不安感だ。

 前作から1年の時を経て発売された最新作『MH4G』について、ユーザーから多くの批判意見が出ていることは以前の記事参照でもお伝えした通り。複数人数でのプレイを前提にしたかのような(ソロにはあまりに厳しい)難易度調整は先日リリースされた修正パッチでも一切手が入らず、違反行為への対策が講じられたのみ。さらに発売当初から噂されていた“課金装備”の中身が有志によって解析され、その画像がネット上に出回った騒ぎもあった。カプコンからはいまだ課金要素の真偽について正式アナウンスがなく、購入済みユーザーをやきもきさせる一因になっている。

『MH4G』への評価が芳しくないのは、データからもある程度は見て取れる。「ファミ通.com」の発表している売上データによると、間もなく発売2ヶ月を迎える現時点での累計販売数は225万本。週販は3万本未満まで落ち込んでいる。このままのペースが続けば同社が掲げる目標「2015年3月までに全世界で390万本を販売する」を大きく割り込むのではないか、と危惧される。発売早々に200万本出荷を報じて以降、同作についての公式発表が沈黙しているのも気がかりなところだ。前作『MH4』は発売1ヶ月で景気よく“300万本出荷”のプレスリリースを出していたにも関わらず……である。

 もちろん『MH4G』の売上についてまだカプコンから正式な見解が出ていないため、あれこれ結論づけるのは早計だ。ただ、本家シリーズの評判は、今後スマホアプリやブラウザゲームとして展開していく一連の『モンハン』ブランドに大きな影響を与えるであろう点からも、カプコンにはオンライン・オフラインユーザーそれぞれの意向を汲み取った適切な舵取りを期待させてもらいたい。
(文/浜田六郎)

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