国家による新たな検閲を生み出さないか? MANGA議連の提示するアーカイブへの危惧

1411_mangagiren.jpg議員連盟「マンガ・アニメ・ゲーム議員連合」の会長
自民党・古屋圭司衆議院議員の公式HPより。

 11月のマンガ・アニメをめぐる出来事の中で、注目を集めたものの一つが、11月18日に行われた「マンガ・アニメ・ゲーム議員連合」(MANGA議連)だ。

 この超党派議連は、海賊版対策やアーカイブの設立、クリエイターの環境改善や人材育成など、さまざまな課題に取り組んでいくという玉虫色な目的を掲げている。

 当初、自民党の議員を中心に計画されていたこの議連は、“表現の自由”に制限を加えるための新たな組織になるのではないかとも危惧されていた。ところが、マンガ家の赤松健氏らの尽力によって、児童ポルノ法改定問題で存在感を示した山田太郎参議院議員が事務局長代行に就任。また、幹事長に就任した馳浩衆議院議員(自民)からは、「この議連では表現規制は行わない」旨の言質も取られており、“表現の自由”を規制する立法が提示される場になるのは避けられた形だ。

 この議連の設立にあたっては、設立総会に招かれたアニメ監督・庵野秀明氏らによって提唱された「クリエイター減税」が注目を集めている。これは、クリエイティブ業界に関係する人ならばジャンルを問わず有効なものであり、実現に向けて大いに期待されるものである。

 それと共に注目したいのが、議連の目的の一つとして掲げられている「マンガ・アニメ・ゲームを我が国文化資源として蓄積し、コンテンツ人材育成や海外からの観光客誘致に資するナショナル・アーカイブの実現」だ。これは、議連の最高顧問に就任した麻生太郎財務相(自民)が、総理大臣だった2009年に浮上した「国立メディア芸術総合センター」の構想を復活させるものと考えられる。2009年当時も賛否の分かれたこの構想だが、再び具体化すれば議論を巻き起こすことになりそうだ。

 今年10月に衆議院予算委員会では、木下智彦衆議院議員(維新)は、クールジャパン機構が15億円を出資する事業に「どぎつい」フィギュアが存在していることを取り上げ、注目を集めた。これに対して、出資が決まっていた事業会社のTokyo Otaku Modeは該当商品のページを削除するに至った。こうした環境の下でアーカイブが実現したしても、将来の人材育成や文化の発信に有益に働くとは思えない。法律とは別の方法で、「国家による選別」という新たな規制の形が登場する危険性は考えておかなければならないだろう。
(文/昼間 たかし)

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