『まんが家総進撃』「痛墓」に「痛棺」…未来のオタクを予見しすぎ!?

 連載しているのが月刊誌の「コミックビーム」(KADOKAWAエンターブレイン)ゆえに、単行本は年に一度の楽しみになっている、唐沢なをき著のマンガ『まんが家総進撃』(2013年に『まんが極道』から改題)。今年も11月末にようやく単行本第2巻が発売となったので、改めてこの作品の魅力に触れてみよう。

 この作品の面白さといえば、まずは実際にありそうな酷いマンガ家、ファン、編集者が次々と登場すること。今回も、理屈ばかりで描かないマンガ家志望者が登場したり、原稿料を払い忘れてのほほんとしている編集者が登場したり……現実そのままというわけではないのだろうけれども、ありえそうなエピソードが満載だ。特に編集者が「うちは売り印税なんですよ」とすっとぼけるエピソード(第17話「お金を払ってくれない人たち」)には、マンガ家ならず出版に関わる大勢のフリーランサーは胃が痛くなる……。

 こうしたエピソードの中で、既刊も含めて特に描写が光るのは、こじらせたまま年老いたオタクたちを中心とした「未来の同人誌即売会」の姿だ(第16話「老後後後後」)。今回も、死んだ仲間が「痛墓」に葬られたとか、葬式は「痛棺」で仲間はコスプレ参加……という話が。どう考えても、あと20年くらいしたら現実に起こりそうな展開である。この展開の時に必ず繰り返されるのは、年老いたオタクたちが「若いオタクはわかってない!」と、いかに自分たちが“通”であるか賞讃し合うシーンだ。ひたすらに気持ち悪い、気持ち悪いけど、現代でもすでにそうした人々はいるわけで、これが20年後、30年後になったら……やっぱり、こうなるだろうなと納得せざるを得ない。

 さまざまな作品でディープなオタク趣味を披露している唐沢氏だけに、相当痛いオタクと接触してきた結果がエピソードに反映されているのだろう。

 ちなみに、まったく誰も注目しないけれど唐沢氏が繰り返し使っているギミックがある。それは「瞽女(ごぜ)」である。瞽女とは、昭和の時代まで存在した旅芸人。盲目の女性が三味線を弾いて村々をまわるというもの。今回の巻では登場しないが、これまでも未来のコミケでは初音ミクみたいな瞽女が大人気になっていたり……。まったく誰得なのだが、少なくとも唐沢氏が“瞽女萌え”なことだけは間違いない。もしかして、唐沢氏の作品を通して、密かに全国で瞽女萌えが拡大しつつあるのだろうか……。

 なお、仕事がなくなったら「新内流し」か「萬歳」でもやろうと考えている筆者も、当然、萌えている。
(文/ビーラー・ホラ)

まんが家総進撃 2 (ビームコミックス)

まんが家総進撃 2 (ビームコミックス)

なぜだろう、胸がしめつけられるようだ…

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