『クロニクル・レギオン』で “皇女”萌え!集英社の新ラノベレーベル「ダッシュエックス文庫」の実力やいかに?

2014.12.02

 11月21日、一挙9冊の同時刊行でスタートした集英社の新ライトノベルレーベル「ダッシュエックス文庫」。既存の「スーパーダッシュ文庫」読者の年齢層が上がったことを受けて、新たに若い読者の取り込みを図って創刊されたレーベルです。今後は、「ダッシュエックス文庫」が同社メインのレーベルとなる予定とのこと。

 そんな新創刊のラインナップの中でも特に期待したいのが、丈月城(文)×BUNBUN(絵)によって綴られた『クロニクル・レギオン』。発売1週間足らずで重版が決定したという人気作です。『カンピオーネ!』(集英社)で大ヒットを飛ばした丈月城氏の新シリーズは、まずその世界観が興味を引きます。

  物語の始まりとなるのは、20世紀末の日本とおぼしき極東の島国・皇国日本。今、この国は外来の強大な権力者によって実質支配されていた。その強大な権力者とは、古代ローマ帝国より蘇った英雄・カエサル。カエサルによって築かれた東方ローマ帝国は、すでにアジアの広大な地域を支配下に置いている。そして、そのほかの世界各地も、蘇った伝説の英雄たちによって、新たな秩序の下で支配されているのです。カエサルといえば、世界史の授業で必ず登場する英雄。しかも、彼を征服者たらしめるのは、身長8メートルにもなる有翼の巨人兵・レギオンの軍勢。

 冒頭で語られる歴史によれば、19世紀に姿を現した聖獣たる半神半獣が国家を守護する神となり、人間に神秘と魔力を提供し、発展を促してきたというのが本作の世界観。そうした中で、東南アジアから勃興した東方ローマ帝国はアジア各地でアメリカと激突して、これを撃破。結果、日本をも支配下に収めています(おまけに敗北の結果、アメリカ合衆国本土は二つの国家に分裂しております)。しかし、新たに勢力を拡大した大英帝国も世界の覇権を手にせんとしており、日本列島には不穏な空気が流れている。

 そんな強大な国に囲まれているなら従属しかない……と思ってしまうところ、そうは考えない者もいました。それが、ヒロインである皇国日本の皇女・藤宮志緒理です。このヒロインの魅力が、とてつもなく濃厚。物語の中で、彼女は語ります。

「ひとまず、この国をわたくしと……ついでに、日本国民がすこしは過ごしやすい場所に作りかえてみたいと思います」

 そう、弱冠16歳の彼女の目的は、日本列島の覇者になること。その野望は戦乱を巻き起こすことを避けられないものですが、彼女の容姿はあくまでたおやか。この智謀に満ちたキャラ設定にたまらなくそそられるのです。そんな中、志緒理は主人公・橘征継の通う学園に転校します。実は主人公はカエサルと同じように英雄の復活者だったのです! 自身の野望のために転校からスタートするという、なんか地道な感じもこれまたよし。

 というわけで、第一巻は設定をじっくりと解説しながら、主人公の通う学園のある静岡県は“駿河市”を舞台に、物語が進んでいきます(“駿河市”は架空の市ですが、駿府城があるとか書かれているので、ぶっちゃけ静岡市です)。要はお姫様を中心に回るファンタジーなのですが、単なる姫でなく「皇女」って言葉だけでも、急に世界が広がった味わいでワクワク感が止まらないのは何故でしょう。何かのマゾヒズムが刺激されているのか……。いや、脚色しているとはいえ、もうすぐ2700年を迎える万世一系たる日本に生きているという現実がそうさせるに違いありません! その歴史があるのは、やっぱり天照大神あってこそ。元来、我々のDNAには「女神が最強」ということが記憶されているのですから!!

 果たして、いかにして日本列島の制覇は成し遂げられるのか? 第一巻を読み終えた時、誰もが「二巻はまだか」と渇望する傑作です!
(文/大居 候)

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