ただの“出落ち”にあらず!? 『自撮りガール!』が描く、こじれた方向へと突き進む生々しさ

1412_jidori.jpg自撮りガール!第1巻(久遠まこと/小学館)

 そもそもどう定義すればよいのか明確な回答はできないが、設定の奇妙さで読者を驚かせて、あとはその設定に頼りながら勢いで突っ走るマンガを、“出落ちマンガ”と勝手に定義しよう。

 これまでマンガの歴史の中で、いくつもの“出落ちマンガ”が生まれては消えていった。実写映画にもなった『デトロイト・メタル・シティ』(白泉社)を始め、ヒットした作品も多い。

 そうした“出落ちマンガ”に、また新星が登場した。10月末に単行本第1巻が発売された、「月刊!スピリッツ」連載中の久遠まこと『自撮りガール!』(共に小学館)である。

 作品のヒロイン・音無凛は大学一年生。高校生まで運動も勉強もできる優等生だった彼女だが、内心では小柄で貧乳な身体にコンプレックスを抱いていた。そのコンプレックスをこじらせた彼女がハマっているのが、“自撮り”である。日々、TwitterとおぼしきSNSを使用して、自分の裸体はもちろんのこと、コスプレ画像までをもアップし、男たちの劣情を誘っている。

 つまり、ロリ体型+通っている大学は頭がよさそう+サークルは微妙にオシャレな「映像研究部」……とまあ、色々揃った女の子が密かに変態行為にハマっているわけである。この設定だけでご飯を三杯はおかわりできそうだ。いや、「映像研究部」に所属しているという設定がサブカル女要素を加えて妄想を高めてくれるので、さらに二杯はおかわりを……。

 ともあれ、目立ち過ぎることに注意してフォロワーが1万人を超えたら新アカウントに移行しながら、ヒロインの自撮りはどんどん過激な方向に。でも、止めることはできないのが変態性欲というもの。

「承認欲求って怖いよね……」とか、心の裡でつぶやきながら描かれる表情は完全に発情状態。おまけに、自分だとバレたら人生が崩壊することを想像して「すっごくドキドキする」と、さらに発情。

「優等生だと思われている私は……自撮り写真を公開して悦んでいる非常識な女なんです――」と、一人でマゾヒストぶりを全開にしているのである。そのドハマり具合は、サークルでの映像制作で衣装を着替える時に無意識に全裸になってしまうほど。おまけに、部屋では全裸で過ごすのが当たり前とか……もう重症、後戻りできないところまで来ているョ!

 ともすれば、序盤の設定だけで息切れしそうだが、本作は一話完結方式でまったくテンションが落ちない。それは「実際こーゆー女の子っているよな」と思わせる生々しさがあるからにほかならない。現実で、こういう女の子の行き着く先は、筆下ろしの女神になるとか諸々……とんでもないこじらせ方をしちゃうわけだが(マジです。誰にでもヤラせる高学歴女子は一定数存在します)。

 一般誌たる「月刊!スピリッツ」でどこまで突っ走るのか、目が離せない作品だ。
(文/ビーラー・ホラ)

viewing(ヴューイング) スマホ

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自撮り棒を使ったバトルものにもテコ入れ可。

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