姫乃たまの耳の痛い話 第16回

引きこもりからコスプレイヤー、そして“脱げる女の子”へ……なんとなく進んだ先で少女が見つけた答えとは?

2014.11.30

――地下アイドルの“深海”で隙間産業を営む姫乃たまが、ちょっと“耳の痛〜い”業界事情をレポートします。

流され続けたある女の子のお話です。

 私は東京都の生まれなのですが、夏休みに母方の実家がある東北へ帰省すると、「東京って怖いところなんでしょう?」と、親戚の子たちからよく聞かれていました。東京は、怖いところではありません。それは怖いところもあると思いますが、道行く先々で理不尽な目に遭いまくるということはありません。それと同じように、地下アイドルをしていると「秋葉原にいるような女の子たちって、一時的にちやほやされてるだけで将来のビジョンがなくなってぼんやりしてるイメージ」なんて言われたりして、実際はそんなことないけどなあ、とよく思っていました。しかし私は、そのイメージに対して、とても言い訳できなくなるような女の子と出会ってしまったのです。

 幼いころから諦め癖があった彼女は、中学に進学後、「面倒くさいから」という理由で不登校になりました。当然のように高校にも進学しませんでしたが、特にやることもなかったので、自宅でアニメばかり見ているうちに、なんとなく声優になりたいような気がしてきました。そして、なんでも娘のしたいようにさせようという両親の元、専門学校へ通うことに決めたのです。

 しかし、「絶対売れなさそうなのに、やる気ばっかりあって暑苦しい」同級生たちに打ち解けられず、小学校以来の学校生活はわずか2カ月で終わりを迎えました。専門学校を辞めた彼女は、「もっと効率よく声優になれる道」を探して、声優志望の女の子が多く働くメイド喫茶のようなところでアルバイトを始めました。

「お金を稼ぐのってすごい大変だって知って、専門のお金を出してくれた両親に申し訳なくなりました」

ところが、そんな反省も長く続かず、メイド喫茶のアルバイトも数カ月で幕を下します。「だって、声優になりたくて働いてるのに、店が喫煙可っておかしくないですか?」という理由でした。それでも数カ月間頑張れたのは、喉の負担にはなったけれど、地下アイドルとしてライブに出演できたメリットがあったから。好きな声優の曲を、憧れの声優と同じように人前で歌えるのです。そして何より、「ちやほやされて、学校の中でだけ頑張ってる専門の同級生よりも一歩先進んだ感じ」がたまらなかったのだと言います。

 ちやほやされることを覚えた彼女は、声優の夢を捨てました。声優になるよりも、自分がアニメの中のヒロインになればいいと思ったからです。偶然、同じメイド喫茶で働いていた友人が「合わせ」の相方が見つからないというので、衣装を借りて一緒にコスプレイベントへ行きました。彼女と友人の周りには、すぐカメラマンの人だかりができたそうです。

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