『機械人形 ナナミちゃん』マンガ家・木星在住インタビュー「何かを喋るんだったら、マンガのコンテンツで喋りたい」

2014.11.28

木星在住氏のマンガ機械人形 ナナミちゃん第1巻(マイクロマガジン社)

 今年6月にインターネットで無料公開されるや注目を集めた木星在住氏のマンガ『機械人形 ナナミちゃん』が、マイクロマガジン社より10月末に単行本で発売された。今回発売されたのは第1巻で、以下続刊予定だという。

 物語は「機械人形」と呼ばれる人間に似たロボットが存在する近未来が舞台。その世界では、普及した機械人形の製造・禁止のための機械人形規制法が国会で成立し、所有者へ破棄を要請する「赤紙」が送付され、清掃員による破棄作業が始まっている。そんな世界を舞台に、機械人形のナナミと孤独な少女ノリコとの物語は描かれていく……。

 この作品が注目されたのは、ある出版社で一年あまりをかけて600ページのネームを執筆、一度は連載が決まったもののボツとなったため、作者がネットで公開するという方法を決断したことにある。しかも、今回の単行本に掲載された作品の単行本化に至る年表では、作者は過去10年にわたって4回、機械人形を軸に据えた作品を描いてきたものの採用されるに至らなかったことが綴られている。

 木星在住氏は、いかにしてこの機械人形というテーマに熱意を燃やし、なぜネットでの公開を決意したのか。

 インタビューの中から明らかになってきたのは、彼のマンガ家になろうという、燃えるような想いであった。
 



――今回、第1巻が発売されましたが、まだ物語は始まったばかり。プロローグの印象を受けました。ホントにまだプロローグですよね?

木星在住(以下、木星) 設定が少し難しいので、それを説明するだけで一巻を使ってしまうと思いました。ですから、とりあえず、設定は度外視してパニック状態のところから始める構成にしたんです。ですので、一巻を読んだだけでは世界観は断片的でわかりにくいかもしれません。2巻、3巻では次第に世界を描いて、引き出しを開けていこうと思っています。

 言葉足らずな部分を2巻、3巻では説明していくつもりですが、それがちゃんと出来ていなかったら、自分が今話したことは嘘になってしまうかもしれません。ただ、過去にこうしたオリジナル作品を作ったことがないので、読者の方に「エンターテイメントを提供していく」と言っても信じられないかもしれません。それでも、自分としてはSFとかアクションなど、さまざまな娯楽要素を詰め込んで描いているつもりです。ですので、作品が終わった頃に「自分が何が得意なのか」がわかる作品になるのではないかと思っています。処女作ですから、自分の得意なことがわかる土台となればよいな、と考えて描いています。

――扉の部分でも「この作品が終わる頃には漫画家としての自分の価値がはっきりすると思います」と記していますね。

木星 これはやってよい、これはダメというのがわかると思うんですよね。もしかしたら、マンガなんか描かないで、「底辺マンガ家ルポとかやれば」となるかも……それはないと思いますが。間違いないのは、「この作品が流行だから」とかではなく、昔からやりたくて何度もボツになった、それでも本当に描きたかった作品だということです。

――巻末にもこの本ができるまでの年表……発想からいく度もボツになっていることまで記されていますね。

木星 なんか、うるさいですよね。よく喋る作家だなあと思われているかもしれませんけどね。

――よく喋るとおっしゃいますが、Twitterを拝見させていただくと、あまりツイートをされていない。マンガを通して発言することに意識を集中させているという印象でした。

木星 何かを喋るんだったら、マンガのコンテンツで喋りたいなと思います。ですので、自分のサイトで公開している作品に、最近はちょっと自分の話なんかをラフで描いたりしています。それって、多分Twitterでやれることだと思うんですけど、自分はマンガ家になりたいと思っているわけですから、そういうのはマンガで提供したいなと思っています。

――今のお話だけでもマンガ家になりたいという意志が伝わってきます。そうした中で、どうしても描きたかった今回の作品は、どれくらいの分量のものになるのでしょうか? 例えば、今回の単行本だと全何巻くらいでしょう。

木星 「作品がつまらなかった」「面白かった」を見極めるのに、何巻くらい必要かな? と。個人的には6巻から10巻あれば十分証明できるんじゃないかなと思います。10巻までつまんなかったけど、そこから面白くなるとは思えない……新しいマンガを描いたほうが早いでしょう。ですので、6巻から10巻を目処にして評価を受けたいと思います。

 現在の構想は、この機械人形のナナミちゃんが、ほかの機械人形と違って感情を爆発させてしまった真相と、機械人形の世界観とがクロスしていくというものなので、面白くなったからといって引き延ばそうとも考えてはいないんです。ですから、綺麗に6巻から10巻までで完結すると思います。

――すると、すでに最終回の構想までは考えてあるわけですか。

木星 もちろん。持ち込み段階とか前回の600ページ描いてボツになった段階から終わりは決めています。一応、人気が出たら尺を伸ばすポイントというのも決めていますけど、その部分しか伸ばせそうな部分がありません。

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