『食戟のソーマ』アニメ化で盛り上がるグルメマンガ界!チェックしておきたい“飯テロマンガ”トレンド3選

2014.11.19

 バブル時代に『美味しんぼ』(小学館)が社会現象を巻き起こして以降、散発的にしか話題作が出てこなかった“グルメマンガ”カテゴリ。だが最近、個性的なグルメマンガの映像化が立て続けに発表されている。

「週刊少年ジャンプ」にて連載中の『食戟のソーマ』(共に集英社)がアニメ化、「まんがタイムきららミラク」の4コマ『幸腹グラフィティ』(共に芳文社)がアニメ化、そして女性版『孤独のグルメ』(扶桑社)とも言われる『ワカコ酒』(徳間書店)が実写ドラマ化……それぞれ放送スタートは来年2015年からだが、いずれも人気のグルメマンガ原作だけに注目度は高い。そこで今回は、数あるグルメマンガから特徴的な3つのトレンドを選んで、秋にふさわしい“飯テロ”作品をレビューしてみたい。

■トレンド1――美女(美少女)が食う!

【代表作】『ラーメン大好き小泉さん』
出版社:竹書房
作者:鳴見なる
巻数:1巻 以下、続刊
類似作品:『幸腹グラフィティ』、『たべるダケ』など

 単行本の帯に「深夜に読んではいけません。 ※太ります。」と記載された、出版社公認の飯テロマンガ。転校してきたばかりのミステリアスな女子高生・小泉さんが、あらゆる店でひたすらラーメンをむさぼり食うという、ほぼそれだけのストーリーだ。普段は無口で無表情な小泉さんだが、ラーメンの話題になれば一変して饒舌に語りはじめ、ラーメンを食べ終えた直後の至福の表情はなんともエロティック。そんな小泉さんの生態をクラスメイト(大澤 悠)の視点からまったりねっとり堪能することができる。

 無口な美女が旨そうなモノを食いまくるというコンセプトは、昨年ドラマ化された『たべるダケ』(小学館)と非常に近い。さらに主要キャラを女子高生にして、ほんのり百合風味のスパイスを効かせた点は『幸腹グラフィティ』と共通点が感じられる。『食戟のソーマ』は料理を食べた際の脱衣リアクション(イメージ図)シーンが衝撃的であるが、こちらの『小泉さん』系列に直接的なお色気シーンは少ない。代わりに食べている時の表情を色っぽく見せる手法で読者の心をつかんでいる。肌色ばかりのマンガ・アニメに食傷気味な人間にとって、こうしたトレンドはなかなか斬新で楽しいものである。

■トレンド2――オッサンが食う!

【代表作】『ネイチャージモン』
出版社:講談社
作者:原作/寺門ジモン 漫画/刃森尊
巻数:全9巻
類似作品:『孤独のグルメ』など

 古くから存在し、また今なお生き続けるトレンドが『小泉さん』と対極に位置する“むさ苦しい男が食う”タイプ。『孤独のグルメ』が強烈にリードしている分野だ。本作はお笑いトリオ「ダチョウ倶楽部」メンバーの一番目立たない男(公式表記)・寺門ジモンを主人公&原作者に据えた異色のグルメマンガである。内容はひたすら肉! 肉! 肉!(たまにクワガタ捕り)……とにかく肉々しい。作中では芸能界一の肉好きタレントを自称する寺門ジモンが、講談社の新人編集者・コマツを従えて、あらゆる“旨い肉”を食べ尽くしていく。

 特徴は実在の店舗が出てくる点、やたら肉の描写が旨そうな点、そしてジモンがひたすらハイテンションでウザい点だ。開店より2時間早く店の前にコマツを連れてきて、“オヤジさんにいい肉食わせてくれって背中でオーラ出すぞ”と真顔で語るジモンはなかなか常軌を逸している。まあこの人は公式サイトからしてこの様子(外部参照:ネイチャージモン・オフィシャルホームページ)だから、現物に忠実といえばその通りなのだが……。全体的にコメディタッチだが肉にまつわる情報量はすさまじく、また読んでいてヨダレが垂れてくるほど料理描写が巧い。さらに「肉のグランドキャニオン」「日本一予約がとれないステーキ屋」などキャッチフレーズもいちいち食欲をそそる。深夜は絶対に読むのを控えたい“肉特化型”の飯テロマンガである。

■トレンド3――食わない!

極道めし(双葉社)1巻

【代表作】『極道めし』
出版社:双葉社
作者:土山しげる
巻数:全10巻
類似作品:『めしばな刑事タチバナ』など

 作中に旨そうな食べ物はたくさん出てくるが、基本的にキャラクターはそれを食べない。にも関わらずジャンル的には料理勝負マンガという、群を抜いた異色作である。『極道めし』の舞台は刑務所。そこに収監された受刑者たちが年に一度の豪華なおせち料理をめぐって、“旨そうな飯の話で優勝した者が全員のおせちから好きな一品を奪い取れる”というルールで賭け勝負をする物語だ。

 今まで食べた旨いモノの話を披露して、それを聞いてツバを飲み込んだ人数の多かった者が勝者になるというルールが実にユニーク。受刑者にとって食事は数少ない楽しみなためか、各々の“めしばな”も自然と白熱する。出てくる料理は肉から魚、ドンブリ、麺類、お総菜までバリエーション豊富。想像しにくい高級食料品ではなく、誰もが共感できる身近なグルメが登場するところもポイントが高い。読者にとっては相当危険な破壊力を秘めた飯テロマンガである。

 同じベクトルのマンガとしては『めしばな刑事タチバナ』(徳間書店)も有名だろう。こちらは受刑者とは対極な“B級グルメに命をかける刑事”が主人公。話す相手さえいれば署内の廊下だろうが取調室だろうが、異様にマニアックなめしばなを延々と繰りひろげる困った刑事だ。だが結果として彼のめしばなが容疑者の心をつかみ、自供へと導くこともある。これまた見事な飯テロマンガと言えるだろう。こうしたジャンルの作品は全体として少数派ではあるが『極道めし』『タチバナ』とも実写化済み。“食わないグルメマンガ”というトレンドとして独自のポジションを獲得している。
(文/浜田六郎)

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