タイムスリップした先には日常と悩みが…黒江S介『サムライせんせい』

1411_samurait.jpgサムライせんせい第一巻(リブレ出版)

 様々な作品で使われてきた定番のシチュエーション・タイムスリップ。現代人が過去に行くか、はたまた過去の人が現代に来るのか。いずれにしても、その中で起こるカルチャーギャップを利用して、多くの作品が描かれてきた。そんなタイムスリップを使った、それが新星・黒江S介氏の初単行本『サムライせんせい』(リブレ出版)である。

 タイトルから想像できるかも知れないが、この作品は江戸時代の武士が現代にタイムスリップして始まる物語だ。そのタイムスリップする男とは、幕末の志士・武市半平太なのである。

 な、なぜここで武市半平太なのか? ほら勝海舟なり坂本龍馬なり、もっと色々いそうなのに、なぜ黒江氏は主人公に武市半平太を選んだのか? その疑問が逆に興味を引いて、次々とページをめくりたくなってしまうのだ。

 そして、半平太がタイムスリップした理由も驚く。史実通り土佐藩によって投獄された半平太は獄中で自らの人生を振り返る。振り返っていたら……気がつけば、現代日本の田舎町の道路に横たわっていた。

 なんて力技だ! この展開に、黒江氏には細かいことはいいからもっと描きたいものがあるという意志が伝わってくる。その後、いくつかの事件を経て事情を理解した現代の人に保護された半平太は、子供相手の塾の先生になることに。でも、半平太の悩みは尽きない。なにせ、元いた時代では尊皇攘夷を掲げて敵対者を斬りまくっていたわけである。いきなり平穏な現代で新たな生き方に切り替えることができるわけはない。おまけに、常にサムライ姿を受け入れる人もいるけど、やっぱり冷たい人もいるわけで、疎外感はぬぐえない。

 カルチャーギャップを描くお気楽なギャグではない。大事件や陰謀に気づき冒険が始まるわけでもない。ただ淡々とした現代の日常の中で、“まれびと”である半平太の苦悩を丁寧に描いていくというのは、今までになかった展開だ。

 そして、第一巻はかなりいいところで「第二巻に続く」となっている。この作品、連載元はpixivコミック「クロフネZERO」でのほぼ月刊連載。なので、次巻の発売予定は2015年秋だという。そんな、待てねえ。連載で読むわ。
(文/昼間 たかし)

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