昔は名前すら出してもらえなかった!? 今は企業も注目している! NIGORO 楢村匠氏に聞く“インディーゲーム”【前編】

■NIGOROゲームの実況は、どんどんしてください!

――また、ニコニコ動画に派生した話になりますが、以前NIGOROの『LA-MULANA』を実況で遊んでいる方を見かけました。

楢村 昔に比べれば、インディーゲームの実況をやっている人は増えてきてはいます。例えば、フリーゲームの『青鬼』『Ib』など、ゲーム制作ソフト「ツクール」で作られた作品の人気実況がいっぱいありますよね。やはり大手にはないゲームだからやっているという人もいますし、実況するなとか、この謎は実況禁止といった縛りがほとんどないために、やりやすいというところがあるのでしょう。

――NIGOROの作品も、ぜひ実況してほしいところでしょうか?

楢村 僕らは、宣伝手段をあまり持っていません。だから、“楽しそうに遊んでくれるムービーを、頼んでもいないのに広めてくれるなんて、こんなありがたいことはない”と考えているんです。だから、フリーゲームとゲーム実況って相性は良いと思っています(ちなみにNIGOROのページにはこんな記載があります。Q:アンタのとこのゲーム画面を自分のページで使いたいんだけど A:好きにさらせ!http://nigoro.jp/ja/about/)。それもあって、ニコニコ動画の中の人も、ゲーム実況とインディーゲームを結びつけようと動いています。難しいですけど、そのあたりが爆発してくれると面白いよなーと思っています。けれど自主制作サークル・Novectacle(ノベクタクル)の『ファタモルガーナの館』なんてノベルゲームなので、実況したらネタバレになっちゃいますよね。

――作品によっては難しいかもしれませんね。

楢村 でも、実況者の中で暗黙の了解みたいなところありませんか? ネタバレは禁止、コメントもネタバレは禁止といったルールというか、マナーというか。この方が楽しいじゃんというようなところが、ある気がするんですよね。謎解きゲームだから、見てしまうと謎が全部わかってしまうところはあります。けれど、ゲーム実況はゲームの遊び方のひとつとして確立していますし、それにお金を払って買ってくれているユーザーがそれで楽しみたいっていうのを止めるいわれもありません。ゲームは買った瞬間からユーザーのものですから。「そうやって楽しみたいなら、それで楽しんでください、どうぞ!」と僕らは思います。謎やネタについて完全にオープンで実況している人もいますし、気を使ってモザイクをかけてくれている人もいます(笑)。そのあたりは見ていて楽しいですよね。

――人によってさまざまなのは面白いですね。

楢村 うちの場合昔から、「実況は好きにやってください」など、こちらから直接ユーザーに絡んでいくことをしています。例えば、実況者に映像用の素材をあげたりなどですね。すると、「この作者は、こういうのを好むんだ」といった気持ちを実況者が汲んでくれて、面白おかしくやってくれたりするので楽しいんです(笑)。

――NIGORO作品の実況動画を見られたりするんですね。

楢村 生の配信はさすがに追い切れませんが、残っている実況動画などは大体見ています。本当にありがたいです。デバッグというかテストプレイヤーがいっぱいいてくれるようなもので、自分が作ったものなので“つまらなさそうに感じているところ”や“喜んでくれているところ”などがリアルに見えるので、こんなありがたいことないですよ。それを見ていると、じゃあ次の作品は裏をかいてやろうとか、まるで一緒に遊んでいる感覚で、こちらはやっていますね。

――Webサイトにおける、ユーザーテストのような感じですね。

楢村 実は海外の方が2〜3年先にやっているんです。プログラム時から配信するなど、秘密主義みたいなものが何もないんです。それこそ、アメリカの『マインクラフト』も出来上がる前から配信していて、試作品の時から配信していました。それが実況され、それに合わせてどんどんバージョンアップしてという形で。僕らがやっている“実況者にこっちから絡むというやり方”は、日本では最先端じゃないかな、などと思っていましたが、海外では当たり前のことでした。

 今でも日本のユーザーからはたまに、「そちらのゲームを実況してよろしいでしょうか?」と断りのメールが来ます。でも大体うちが返すのは、「許可取る必要もありませんよ」です(笑)。もちろん、厳密に禁止しているメーカーもあるでしょうけれど。面白いのは、海外だと、「なぜそんなことを聞かれるのかがわからない」っていうふうに返すところです。

――スタンスがもう全然違うんですね。

楢村 全然違いますね。以前、ゲーム喫茶がゲームを置けないという問題がありました。JASRAC(一般社団法人日本音楽著作権協会)がカラオケの使用料を取るというのと一緒で、ゲーム喫茶でゲームをやらせるのは、ソフトをお客さんが買ったわけじゃないからだめだっていう。それがニュースになり、それでインディーゲームだったらどうぞ好きに置いてくださいという流れになりました。そこで、海外のゲーム会社にも許可申請をすると、「なぜ許可を取るのかわからない」と返してくるんです。「バーにゲームを置いてくれるんだろ? ありがたいじゃないか、なぜ許可を俺に取る?」って(笑)。

 あとは、配信を始めたインディー作家もだいぶ増えています。手軽になったというのもありますが、自分で何かしら発信しないといけない、というふうに思い始めたんでしょうね。

――ストリーム配信がメジャーになったということは、作り手からするとよかったんでしょうか?

楢村 僕たちは本当にありがたいですよね。著作権とかうるさい会社の場合は面倒だな、と思うかもしれませんが。そのせいで、ユーザーの食いつきが鈍くなるところがあるのかなと思います。メーカーによっては「制限付きでなら実況していい」とするゲームなどもありますが、手放しでオープンにやっていいですよというメーカーは、やっぱりないんじゃないかなと思います。

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 楢村氏に“インディーゲーム”についてお聞きしましたが、意外とその定義がないことや、実は昔から似たようなものは存在していたとわかりました。そして、ジャンルの違いではなく作り方が違うだけということ、今に至るまでの開発環境には大変な面が数多くあったことも知りました。後編では、海外と日本のインディーゲームの捉えられ方の違いや「INDIE STREAM FES」の内容やエピソードなどについて掘り下げていこうと思います。
(取材・構成・文/らくしゅみっくす)

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らくしゅみっくす
ゲームとピアノが好きなライター。中でもSTGが大好きで、プレイのみならず、ゲーム音楽のピアノ演奏も行う。

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