昔は名前すら出してもらえなかった!? 今は企業も注目している! NIGORO 楢村匠氏に聞く“インディーゲーム”【前編】

――インディーゲームが制作しやすくなったということで、自分たちも始めてみようといった後続の人たちがもっと出てくるかもしれませんね。

楢村 ありえますね。今年の東京ゲームショウでは、久しぶりに10歳か20歳くらい年下で「ゲーム作りを始めたい」といった人に会いました。「ようやく出てきたか!」という気持ちがあり、とてもうれしく感じました。けど、「僕たちもインディーゲームを作りたいです」と言われると、僕は「やめておけ」って言ってしまうところがあります。日本でいえば、インディーゲームで大成功した例がまだ一つもないからです。ギリギリの中でやっているといったチームばかりなので……。

 だから今、そういうふうに目指す人がいても良い思いはできないよって気持ちもありますし、大成功の実例がないから、ゲーム制作を目指す人が少ないのかなとも思っています。やっぱり、“やったら目立つ”とか“大成功が約束されている”とかでないと、優秀な人も集まりにくいじゃないですか。そういう意味では、まだまだインディーゲームは発展途上中と思っていますね。

――けれど、ブームになりつつあることは確かだと思います。

楢村 ブームといってもまだ発展途上中なので、浮かれているのも危険だなと思っています。ブームというものは、終わったら本当に見向きもされないじゃないですか。もし、「インディーゲームはあまり売れない」となったら、2年後くらいには名前すら聞かなくなるほど、すぱっと切られる気がします。ですからそれより前に、日本におけるインディーゲームの確立をしておかないといけないなって。

――基盤作りを今のうちに……ということですよね。

楢村 例えば僕たちが、「盛り上げるぞ!」と思っても、少人数での制作ですから、次の作品が出来上がるのは1~2年先になります。ですから、その間にいろんな人がいろいろな作品をリリースするくらい頭数が揃わないと、ブームで終わってしまいそうな気がするんです。世界に向けて売るタイプの人、良作を生み出す人たちなどが何組も現われないと、安定しにくいと思います。

――では今は、インディーゲームの入り口が広くなった状態というイメージでしょうか?

楢村 そんな感じですね。ブームというのは、作っている側や売っている側からは体感できないものです。メディアやハード会社がブームを仕掛けているけれど、お客さんにとってブームになっているか? というと、多分まだ“NO”だと思うんですよ。

――まだちょっと、作り手と世間では温度差がある感じはします。

楢村 「ファミ通」とかで10Pくらいぶち抜きでの「インディー特集!」とかやり始めたら、ちょっと違うのかなとは思っていたのですが、最近になって、時々特集を組まれることが増えたので、良い方向へとまた変わってきていますね。

■楢村氏が見る「東方Project」

――インディーゲームの中には同人ゲームも含まれるとお話しされていましたが、「ニコニコ動画」で爆発的な人気を誇る「東方Project」について、どのように見ていますか? 「東方Project」の場合、公式がルールの範囲内で二次創作を公認していますし、ニコニコ動画でユーザーが手を加えていくことによって、さまざまな形で浸透していったと思うのですが。

楢村 「東方Project」の生みの親であるZUNさんは今も現役で活動していて、かなり古い頃からやっている、同人のトップみたいな方ですよね。彼とは何度か直接お話ししたことがあります。ゲームが好きな方からは、「同人とインディーゲームって何が違うんだ?」とか、「あいつらは仲が悪いんじゃないか」などといろいろな臆測が飛び交うんですけど、実際は全然。「自分のやりたいものが売られてないから、自分で作ったところがスタートだった」などと語り合っています。

 昔から二次創作をOKしていたという点ではちょっと特殊な部類ですが、「作りたいから作った」ということと、「コミケなどに行かないと買えない、でもやりたいからわざわざ行って買いにいく」点では、インディーゲームブームの走りというか、ひな形というか、感覚としてはそうなのかなと思います。

――ニコニコ動画といえば、「ニコニコ自作ゲームフェス」といった個人の自作ゲームのコンテストがありますね。

楢村 「ニコニコ自作ゲームフェス」はインディーというくくりとはちょっと違うかもしれませんが、似たようなものだと思います。ゲームを作る裾野を広げている活動といいますか、発表して人気投票があり、優秀な作品を配布して実況してもらうことなどが、SONYやMicrosoftなどの息が掛からずに行っているゲーム作りというイメージです。

――JavaScriptなどを使って自分でシューティングゲームを作るといった、自由にゲームが作られている様子も見られます。

楢村 ゲーム作りのルールって“自分たちがやりたいから、これをやる”というものだと思います。僕は40歳なんですが、中学・高校の頃、ファミコンが出た裏で、ホームパソコンを利用してゲームのプログラムを自分で作り、雑誌に投稿して、掲載されたらそれを見た人がプログラムを打ち込んでゲームとして遊べるという形があったんです。「ニコニコ自作ゲームフェス」といったものの根というか始まりはそんなところからとは思うし、あれを知っていた世代が、今、インディーゲーム制作の中心にいるような気がしますね。

――昔から形は違えど存在していたとは……! 存じ上げませんでした。

楢村 いやまあ、知らない国民の方が多いです(笑)。

昔は名前すら出してもらえなかった!? 今は企業も注目している! NIGORO 楢村匠氏に聞く“インディーゲーム”【前編】のページです。おたぽるは、騒動・話題インタビューゲームの最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

- -

人気記事ランキング

XLサイズ……
XLサイズって想像できないだけど!!