昔は名前すら出してもらえなかった!? 今は企業も注目している! NIGORO 楢村匠氏に聞く“インディーゲーム”【前編】

――なるほど。では、プレイするユーザーは、インディーゲームをどう捉えるべきなのでしょうか?

楢村 先ほど言ってきたことは作っている側の問題なので、遊ぶ人はゲームを選ぶ際の選択肢が広がったと考えるくらいがちょうどいいでしょう。大手のものより安いという特徴は確かにあるので。そもそもインディーゲームを知らなかったという人は、最初は好みに合ったものをやってもらえればいいと思います。ものがゲームなので、遊んで面白いと思ってもらえるか、気に入ってもらえるかの方が重要だと思いますし、無料やセールのときでもいいので、何かしらインディーゲームに触れてみてほしいです。今では、PS4やXbox One、3DSとかでもインディーゲームがありますしね。

■企業がインディーゲームに注目し始めたのは最近

――そんなインディーゲームですが、先日行われた「東京ゲームショウ2014」で大きく取り上げられる様子が見られました。企業がインディーゲームにも注目しているという象徴なのでしょうか?

楢村 SONYやMicrosoftなどが「商売になる!」と動きだしたので、最近注目を浴びたという印象です。何年か前から、ゲーム会社をはじめゲーム業界には閉塞感があるんです。続編ばかり、似たようなゲームばかりリリースされる現状というのでしょうか。それを会社の中でまずいと考えて新しい企画を出してもなかなか通らないし、有効な手段が打ち出せない……と嘆いている人がたくさんいたんです。そのようなところに、その「少人数で好き勝手に作る」、いわゆるインディーゲームのブームが起きたんです。

 そんな中、去年アメリカで「Game Developers Conference 2013」というゲーム開発者のカンファレンスがあったんです。そこでは毎年、「Game Developers Choice Awards」という毎年発表されるゲームアワードがあるのですが、その中に、『風ノ旅ビト』という作品がありました。この作品はPS3向けにリリースされた、少人数で作成したインディーゲームなのですが、多くの賞を獲得しました(『風ノ旅ビト』は、第13回GDC Awardsにて、「Game of the Year」をはじめ6冠を獲得)。一方で、大金をかけたトリプルAタイトル【編注:大ヒット作品】みたいな作品は1つしかノミネートされなかったんです。これも業界の中でショックが大きかったんだと思います。

――今までの常識が覆ったということですよね。

楢村 これがあって、SONYのハードが、「インディーゲームを扱います」と動き始めたり……。日本でもインディーゲームが注目を浴び始めたのは、ほんとにここ1~2年の話です。それまでは知られるすべすらなかったというか、趣味の延長レベルみたいなものでした。

■これまでは厳しかった!? インディーゲームを取り巻く環境

――インディーゲームが注目される前はどのような扱いを受けてきたのでしょうか?

楢村 何年か前は、扱いの悪さが見受けられました。作者の名前が出ない・買い取られて終わりというような形です。インディー制作者が考えたアイディアを買うのはいいけど、その人の名前は表に出さず、買い取った企業名の作品として出していたこともありました。

――制作者の名前が出ないというのは、なんとも言えない気持ちになりますよね。

楢村 それに、人気が出てもそれっきりで続かないことは大変なんです。僕たちの場合、「NIGORO」は4人でやっているチームなのですが、プログラマーがサウンドメイクをしていたり、僕もディレクターや運営、広報など、いくつも業務を兼ねていたりします。だから、何をするにしても労力がかかるんですよ。それに、名前が表に出ないということは宣伝にならないので、いろいろとダメージが大きいんです。僕たちはもう8年目になるのですが、初めの頃はFLASHゲームで展開していたので、「外注でFLASHゲームを作ってほしい」という依頼がわりとあったんですよ。けれど、その頃から、“自分たちの名前がどこかに載らないと受けません”という姿勢でやってきました。

――8年前からですか!?

楢村 趣味レベルでいうと、もっともっと前からやっていました。今一緒に制作を行っているメンバーとは、もう10年以上の付き合いです。それが8年前ぐらいに、ゲームがインターネットで販売できるようになって、「これは商売になるんじゃないか」と思い、本格的に始めたんです。しかし当時は、本当にインディーの扱いが悪かったです。僕たちが独立してから、初めにリリースしたのが「Wiiウェア」【編注:Wii専用のダウンロードソフト】でした。インディーだからといった見方もされていません。ですから、大手企業と同じように契約を結び、開発機を自前で買い、CERO(特定非営利活動法人コンピュータエンターテインメントレーティング機構)といった年齢別レーティング審査も自分たちでやる、こうなるともう少人数なので限界が出てきます。

――8年前は相当大変な思いをされたのですね。今では、そういったことはなくなってきているのではないでしょうか?

楢村 去年から今年にかけて、SONYやMicrosoftが完全にバックアップしてくれるようになってきました。例えば、開発機は貸します、一回審査が通れば世界でリリースできるようになりますなど、いろいろと環境は変わってきています。ほかにも、ゲーム開発に有用なツールなどが使いやすくなりました。本当は何十万、何百万もするようなソフトを、インディーゲーム制作者に限って1000円で利用できたりもします。インディーゲーム専用のコースというかプランでしょうか。このようなものも出てきているため、この1~2年で環境が一気に良くなった感じがします。

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