Kindleでも読める30年前の名作プレイバック 第19回

少女マンガなのに恋愛という概念がないのか……!? 『動物のお医者さん』が与えてくれる安心感

 しかし、そもそも『動物のお医者さん』は少女マンガなのか? という疑問も残る。

 確かに、表現としては少女マンガである。とても繊細なタッチだし、キャラクターも美形が多く、服装もとてもオシャレだ。キャラクターが登場する際には、背景に花が描かれていたりする。
 
 でも、内容はどうにもこうにも少女マンガっぽくないのだ。
 
 主人公であるハムテルは、10代にしてすでに初老の落ち着きを持っていて、何事にも動じない。諦念すら感じる。獣医を目指したのも、獣医になれば押し付けられて飼うことになった動物の治療費が浮くから。思わず、「ドラクエの職業を選ぶ時だってもうちょっと考えるぞ!!」と思ってしまった。

 さらに、友情や家族の絆などもとても淡白に描かれているのだが、それが特に顕著なのが恋愛感情だ。
 
 少女マンガの多くは、主人公のむき出しの恋愛感情が中心に描かれる。というかそれこそ少女マンガである。フランスで革命が起きようが、悪魔を召喚して戦おうが、少女マンガの根底部分に恋愛は欠かせないのである。

 しかし『動物のお医者さん』を読んでいると、「そもそもこの世界には恋愛という概念がないのではないか?」と思えてくるのだ。

 主人公の先輩に、菱沼聖子というど天然のキャラクターが出てくる。普通、マンガに出てくるど天然女子といえば、読者が

「実際にいたら好きになっちゃうかもな……」

と思ってしまうキャラだったりするのだが、彼女の場合はそうでもない。

 ど天然と言っても、ドジっ子という意味ではなく、痛覚が鈍く、血圧が異常に低い、怒るとフロッピーディスクを破壊するほどの静電気が出る……といった、全然胸キュンしないど天然なのだ。20代後半でそれなりに結婚に焦っていたりするのだが、結局、誰とも恋に落ちたりすることなく連載は終わってしまった。少女マンガのヒロインとしては、ありえない結論である。

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