「『鷹の爪』は監督から監修へ」FROGMAN、人生の転機となった『菅井君と家族石』から10周年インタビュー!【中編】

■FROGMAN流の作品制作の秘訣 そして『秘密結社 鷹の爪』ブランドの今後は?

1411_frogmanint_taka.jpg秘密結社鷹の爪団のポータルサイト鷹の爪.jpより。

 こう語るように、FROGMANさんは今でこそアニメを制作しているものの、もともとは実写畑の出身である。東京から島根に移住したのも、アニメを作るためではなく実写映画『白い船』のスタッフとして、同県を訪れたのがキッカケだった。

FROGMAN「僕の場合は、(アニメについて)知らなくてよかったところもあると思うんですよね。本当にアニメ好きだったらFlashみたいなツールを選ばなかったと思うし、伝統的な手描きの2Dのほうに走ってたと思いますが、そこらへんのこだわりがなかった。ほかのアニメの世界って重厚長大になりつつあって、『きれいな線を引きたい』というアニメーターも多いじゃないですか。その中でも、もうちょっと物語の展開のテンポ感というか……“いかに動作の少ない、絵の少ない中で物語を見せるか”をプリプロやシナリオでこだわるというのを、自分の中で大事にしています。自分がアニメファンだったら、原作ありきで『あのマンガを自分が動かしたいんだ』となっちゃうと、誰か任せになってしまって不幸だなと。どっちがいいとか悪いとかじゃないと思うんですけど、僕らがやろうとしてることに関しては、僕自身がアニメファンでなくてよかったなと思います」

 いくら会話劇を主体として「劇メーション」のように極力動かさない絵で制作費を抑えるにしても、物語の間を持たせるのはプロでも大変だ。

FROGMAN「ウチのアニメって、知らない人が『簡単にできるわ!』と思って実際にマネしようとしても、途端に苦しむと思うんですよ。こんなに作るの難しいんだって。それは、シナリオをウチの作品に適した作り方にしているから。そういう最適化されたシナリオの書き方って鉄則があるんですよね。まず会話劇で、バストショットだけで完結することができる。ウチのアニメの画作りって基本的に、テレビの連ドラと同じなんです。冒頭はまず風景を表す。登場人物はどこにいるのかと。その後は基本2ショットか1ショット抜きと、そのカットバック【編注:交互にシーンを映す手法】」

 FROGMANさんの作品は、実写の制作現場にいた経験則を守りつつ、シナリオに割く労力が多いのが、ほかにはない強みになっている。

FROGMAN「撮影がまず早い。そして役者さんのお芝居がマズい。マズいというか、役者さんにとって難しいのは、ロングショットのお芝居なんですよ。映画ならともかくテレビドラマでは、忙しい役者さんはセリフを覚えるのが精いっぱいで、全身のお芝居ができない。だから僕の『秘密結社 鷹の爪』の総統なんかも、全身のお芝居ができないヘボい役者なんですよ。ヘボい役者でも“らしく見える”のが、バストショットです。吉田くんとかも全然動かないのに、会話劇で起伏があるからこそ成立する。そのためにはバストショットで安定するような物語にする。自画自賛するわけじゃないですけど、以前はテレビとか映画の業界にずっといて、そういうのを理解した上で制作をやってるのが自分の強みだなと。そういうのに気付いてない人が多くて意外なんです。

 今どきのアニメだと、とんでもないとこにカメラが入ってるじゃないですか。それはアニメのいいとこではあるんですが、『ここで何故アオリなの?』『入れ物の中から俯瞰?』というのが平気である。カメラが一定してないのを映画でやろうとしたら、撮影や画が相当大変。それだったら、物語のテンポや展開にもっと注力すれば、もっとシナリオをちゃんとやれば面白くなるのになぁ、と思います」

 それは映像技法を追求するあまり、今のアニメが袋小路にハマっているのではないかという危惧でもある。

FROGMAN「でもアニメをやってる人は、『この画を描きたい』とか『こういうのやりたい』っていうのがあるんでしょうね。萌えが好きな人やSFが好きな人にしか通用しない文法だったりするから、はたから見るとすごく気になりますね。オタクアニメの悩みというか……『アナと雪の女王』みたいになれない1つの理由は、そこだと思うんですよ。もっとワールドワイドな文法があるはずなのに、オタク目線になりすぎちゃってるところがある。もちろんオタクは世界に広がりつつあるけれども、世界のオタクマーケットとディズニーのマーケットには開きがある。だからこそ、日本のアニメが増えてないということがあるわけですよね。そこは変えていきたいと思うわけですし、僕らが(現在のアニメの文法を)変えられるとは思ってないけど、少なくともDLEがそっちには行かないようにしている。もしくはウチみたいな作り方もして、萌えもやればいいじゃないですか。だから営業部署を作って、会社の屋台骨を支える制作部も作ればいいんです」

 DLEの強みの1つには、営業とクリエイターが直で話をできるところにもあるという。部署ごとではなく、会社全体でコンテンツを生み出していくという姿勢の表れだ。その姿勢は、そのまま看板作品の『秘密結社 鷹の爪』の未来につながっていく。

FROGMAN「『菅井君と家族石』をやって、『古墳GALのコフィー』をやって、『秘密結社 鷹の爪』をやって、出すもの出すものがヒットして『これはすごい! 天才かも!』と思ってましたけど、その“3段ロケット”が良かったんですよね。その後は全然鳴かず飛ばずですが、この“3段ロケット”に救われたというか……。

 実は今年に入ってから、僕は『秘密結社 鷹の爪』のコンテンツを作ってないんです。コンテ作業は若い人に任せています。僕が関わってるのは、シナリオと声と最終的な監修だけです。DLEが上場して考え方が変わって、FROGMANがいなくなったら『秘密結社 鷹の爪』が終わるということにしたくない。ウチのディレクターたちを鍛えていきたいというのと、新規のものをやりたい。テレビシリーズもコンテをやってないですし、CM案件も人に任すというか、チームでやっています」

 これは【前編】の「Flashアニメと言わないようにしている」という発言にも関連してくるだろう。長期的な視野で鑑みると、制作ソフトの流行に作品が左右されてしまうのはマイナス面が大きい。同様に、『鷹の爪』やDLEがFROGMANさんの好不調に左右されないようにしようということである。

 こうした動きの背景にあるものとは……? 次回は、マザーズ上場を果たしたDLEと、そのビジネスについて、FROGMANさんに話を伺っていく。
(取材・文/真狩祐志)

【後編】はこちらから

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