『アニソンの創成期とソノシートの果たした役割』レポート!

「小林亜星の登場で日本の音楽界が変わった!」ソノシートの仕掛人・橋本一郎が語ったアニソンの進化

1411_sono3.jpgなつかしのソノシート。

 さらに、同年11月から放送された『8マン』も瞬く間にヒットを飛ばしていく。

 そして、その収録の際、橋本氏はある衝撃的な出会いを果たす。スタジオディレクターから「すげえのがいるんだ」と言われて紹介された、作曲家・小林亜星だ。小林はちょうどペプシのコマーシャルソングを収録中であり、その曲を聞いた橋本氏は「日本の音楽界が変わる!」と感じたという。

 こうした縁から、『狼少年ケン』の主題歌は小林に託されることとなる。

「『狼少年ケン』の収録スタジオには打楽器がダーッと並べられていて、弾けるような音が聞こえてきたんです。そこで、この歌でアニソンの世界がまた変わるんだ、歴史がひとつ動くんだ、という体験をしましたね。小林亜星の登場で三木鶏郎さんの時代は完全に終わったんです。

 当時のアニソンは、こうやって、作曲家たちが競いあって新しいものをつくろうとしていたんですよ。みんな、『俺がトップに立つ』という気持ちがあった」(橋本氏)

 その後、『オバケのQ太郎』の主題歌『オバQ音頭』(Q太郎の声優・曽我町子が歌った)のソノシートは400万枚を記録し、社会現象にまでなった。アニソンソノシートがここまでヒットした背景には、雑誌として書店販売できるというメリットがあったという。

「あの頃、書店は3万軒もありましたから。それ以外でも、文房具屋の軒下に洗濯バサミで挟んで売られてたりもしてたんです」

 そうした中で、「ヒットの仕掛け人・橋本一郎」の名は高まっていき、橋本氏のもとには各レコード会社の人間が「ゴマすり」にやってくるようになる。「自動車を持ってきたり金額の書いていない小切手をチラつかされたり……そういうことがのべつ幕無しにあった」という。『ジャングル大帝』の主題歌(作曲・冨田勲)は、「そんな当時の生臭い事情を忘れるほどの名曲ですね」と橋本氏は続ける。「50年前に、よくぞこんなものを作ったなと思えるような名曲」だと絶賛した。

 こうして、尽きることのない話は「この歌でアニソンは市民権を得た」という『あしたのジョー』の主題歌で終幕となったのだが、実に4時間以上(!)に渡る講演会で披露された内容はわずか9年間分。このほか、誰もが知っているアニメ主題歌の作詞をゴーストライターとして手がけていた話や、担当として手塚治虫伝説の数々に関わった話など、表に出せない貴重な話が次々と飛び出す濃密な講演会となったことは言うまでもない。

 ソノシートというソフト自体は消滅してしまったものの、当時のアニソンは今なお色あせず聴くことができる。その背景には、橋本氏や作曲家たちが切磋琢磨し、後世に残るような作品を生み出してきた歴史があるということを、忘れてはいけないだろう。
(取材・文/縛りやトーマス)

■京都国際マンガミュージアム
http://www.kyotomm.jp/

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