――アニメの公開が始まってから、ネットでは早くもさまざまな意見が寄せられていると思いますが、いかがでしょう。想定していたような反応が寄せられていますか?
メドゥズィニ 非常に好意的な意見が多くて、私たちも喜んでいます。日本のアニメにはさまざまな優れたものがあり、競合できるとは思っていません。ただ、我々のアニメが特別だとするならば、大使館として初めてアニメをPRに使おうという点だと思います。それによって、今後も注目を集めていくことができるのではないかと思っています。ですので、多くのフィードバックが寄せられるのはうれしいですね。今時点で17万を超えるPVがあるんですが、予想以上で驚いています。
日本でのイスラエルのイメージというと、通常は紛争とか戦争、政治ばかりが注目されがちですが、それはイスラエルの小さなことにすぎません。できれば、ほかの部分を見てもらおうと常々思っておりますので、政治的でないソフトなやり方で日本の方に注目してもらえるのは、うれしいことですね。
――大使館がアニメで自国をPRするというのは、今までにない試みです。大使館の内部では、反対意見のようなものはなかったのでしょうか?
メドゥズィニ 反対というのは、ありませんでした。というのも、シャロウムちゃんが大使館の人々にとっても喜ばしい結果をもたらしていたからです。
ただ、私たちが気をつけたのは、プロパガンダにならないようにすることでした。大使館から何かを発信するということは、受け手の側に、何か政治的な意図が込められているのではないかと見られがちです。ですので、絶対に政治的な要素を込めないということを意識して、このプロジェクトを進めました。まったく政治的な要素が含まれないこと、議論を呼ぶような要素を含めないこと、それから、特定の人々に不快な思いを含ませないことを徹底して作ったわけなんです。それで、ソフトでありながら、ストーリーがあり、イスラエルはただ背景としてあるということを志向しました。
――プロパガンダにならないよう意識されたということですが、それでも大使館がPRとして制作する以上、そこには何かの意図があるのではないかと見なされることは避けられません。そうした意見には、どう答えていくつもりですか?
メドゥズィニ 大使館が行うさまざまなプロジェクトに、そうした意見がつきまとうのは避けられないと思います。残念ながら、私たちはそういった意見には慣れてしまっている部分もあります。ただ、観光のPRというのは、それらの意見とは切り離されているものだと考えています。それをもしプロパガンダというのであれば、そうした人たちは我々の活動に対して嫉妬の念を抱いているのではないかという気がしています。
――これから、物語が進む中で、イスラエルの名所なども出てくると思います。特にオススメのスポットなども教えていただけますか?
メドゥズィニ 若者のライフスタイルのようなものを見たいなら、テルアビブがうってつけですね。テルアビブのナイトライフは世界的にも有名ですし、キレイなビーチや多様性のある文化も楽しめます。歴史や宗教に興味があるなら、やはりエルサレムでしょう。また、砂漠で自然と親しむのもオススメです。
――今回のアニメでは飛行機でひとっ飛びでしたが、やはり直行便もなく訪問するには不便な面があることも否めません。日本でイスラエルの文化を身近に知ることのできる場所というものはあるのでしょうか?
メドゥズィニ 東京には、いくつかのイスラエル料理のレストランがありますが、どこも美味しいですよ。また広尾のJCC(Jewish Community of Japan)では、ユダヤ教の祭日を一緒にお祝いすることもできます。一般の人も参加できますから歴。史や宗教に興味のある方は、ぜひ訪問してみてください。また、大使館のFacebookでイベントを告知していますので、こちらもよろしくお願いします。
――さて、今回のPRビデオの目標は、日本からの観光客を増やすことにあると思うのですが、どのくらいを目標にしているのでしょうか?
メドゥズィニ 現在、年間の日本人旅行者数は1万5000人程度ですので……10万人! とは思いますが、まずは4万人くらいには伸びてほしいと思っています(笑)。
――全7話の配信後には、どのようなプロジェクトを予定しているのでしょうか?
メドゥズィニ 各話で別々の観光地を紹介していくのですが、それをめぐるツアーなどを実施できないか、旅行会社と交渉しています。このシリーズを好んでくれた人たちには、非常に魅力的ですし、イスラエルは小さな国ですから、1週間もあればメジャーな観光地は、だいたいめぐることができますよ。
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インタビューの中で初めてわかったのは、イスラエルの人々の持つ、日本の文化への高い関心だ。そして、話の中では、彼らが日本のポップカルチャーに憧れる背景には、それらが平和の中で培われてきたという面もあるのではないかとも感じられた。
残念なことに、今年、日本で大きく報じられたイスラエルに関するニュースといえば。ガザ侵攻をはじめ、やはり連綿と続く紛争とは縁が切れなかった。このPRをきっかけとして、増加するであろう人と文化の交流が、シャロウムちゃんの目指す平和に何かの役割を果たしてくれることを願ってやまない。
(取材・文・構成/昼間 たかし)
■駐日イスラエル大使館
http://embassies.gov.il/tokyo/
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