未来の生物のフィギュアをどう作る? 海洋堂の造形家・松村しのぶが子どもたちに伝えたこと

2014.11.10

松村しのぶ氏のインタビューも所収されている「海洋堂」半世紀フィギュア大図鑑(学研パブリッシング)

 11月7日放送の『課外授業 ようこそ先輩』(NHK Eテレ)に、造形家・松村しのぶが登場した。1962年、山口県に生まれた松村は小さい頃から昆虫好きで、虫の姿を目に焼き付けて育ち、水産大学を2年で退学。その後、環境保護団体で図鑑のイラストなどを描き、26歳で海洋堂に入社する。同社では「チョコエッグ 日本の動物シリーズ」をはじめ、「エヴァンゲリオン初号機」「特撮リボルテック ガメラ」といったヒット作を手がけた。そんな彼が、山口県の母校に赴き“1000万年後の生き物を作る”という内容で授業を行った。

 6年生のクラスで授業を始めた松村は、まず自分が手がけた動物フィギュアを披露。魚をくわえたオオサンショウウオ、羽を広げたホタル、オットセイを襲うホオジロザメなど、動きのあるフィギュアの数々に生徒たちは興奮を隠し切れない。

 授業の中で生徒たちの将来なりたい職業を聞いた松村は「それぞれの職業に磨くべき感覚がある。料理をする人は舌、音楽家は耳、美術家は目が大事」と教え、教室を飛び出し、近くで生き物を捕まえにいくことに。藪の中へ入るときに「蚊に刺されるけど諦めて」と言い放つなど、先輩らしい姿や言動もちらほら。

 そこで生徒たちはカブトムシ、ショウリョウバッタ、アカハライモリ、ベンケイガニといった生き物を捕獲。各班でフィギュアにする生き物を選んで、観察&スケッチが行われた。ここで松村は、恐竜のティラノサウルスのフィギュアを見せ「化石は、今いない生き物を考えること。皮膚は象っぽく、口は爬虫類っぽくしたり。そして、これは過去のものですが、では未来は? ということで、今日捕まえた生き物の1000万年後の姿を想像して」と言い、未来の生物のフィギュア製作がスタート。

 その後、生徒それぞれが完成した生き物のフィギュアを発表。ジャングルになった地球を生き延びるために手足が太く、警告色のついた羽を持つバッタや、筋肉が発達したザリガニ、体表が保護色の緑になったカブトムシなど……松村の話にインスピレーションを受け、想像力豊かな生き物が製作されていた。

 最後に松村は「目玉で考える。わからなかったら本物を見る。今のうちからいろんなことに興味を持って、好きなことが見つかったら一生やってみる」というアドバイスを送る。この講義からは、実在、架空問わず、心惹かれる生き物の姿を映し出す松村しのぶの哲学が透けて見えるだろう。この松村の授業を受けた生徒のうち、誰かが造形家として活躍してくれるかもしれない。そんな日を楽しみにしたい。

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