「ようやく3DCGで作品として成立するものがでてきた」『楽園追放』水島精二監督に声優・古谷徹が問うた3DCGの必要性

1411_rakuen2.jpg声優の古谷徹さん。

 こうした話を感心しきりで聞いていた古谷さん。その一方で「3DCGでやる必要あるの?」と聞くと、「ぶっちゃけ、あんまりない」と返した水島監督。会場も笑いの渦に包まれた。長い尺の3DCG作品という市場では、結局“フォトリアルよりもセルルック”という事情がある。従って、3DCGは「セルアニメに極限まで近づく」ことが目標として掲げられ、グラフィニカだけでなく同じくスタジオの「サンジゲン」などもその先の表現に挑んでいるという。

 また、古谷さんからは「制作費も時間もかかるんでしょ?」との質問も。水島監督は「かかるけど、セルアニメに比べ画が破綻することが少ない」と答えた。3DCGの利点として、共有のモデルを用いるため個人のスキルに頼らず、生産性が高く、制作ラインが成立できれば確実にクオリティーを落とさずに安全に作っていける点を挙げた。一方で、セルアニメは手作業であるがゆえに3DCGみたいな制約がなく、イマジネーションが広げられ、もっと自由なものになっていくのでは、と予想していた。セルアニメが担ってきた記号化された部分は3DCGのほうが生産性が上がるし、その空いたところでセルアニメはもっと豊かになればと思っている、と語った。

 そして、古谷さんは「制作に余裕あったんでしょ? アフレコの時に事前にもらった資料、ほとんど絵やみんなの声が入ってたからビックリしましたもん。それもずいぶん前ですよ」と疑問をぶつける。それに対して、水島監督は「実制作は2年で、プリプロ含めると期間は3年」と答えた。3DCGでは、最終的な仕上げ工程を考えると、作画(アニメーション付け)に入る2カ月前に画(レイアウト)を決めなければ、その後の作業が間に合わない。そのため、結局音を先に録らないと絵を詰められないという事情があるのだ。このような工程により、レイアウトといったアフレコ用の素材は、セルアニメーションよりも早く揃えられたようだ。

 最後の挨拶として、古谷さんは「今どき珍しい手間、暇、金がかかってる作品。これは見ないと損」、水島監督は「これから本当に3DCGの技術自体も向上して新しいものをみせていけると思うけど、そのひとつのエポックが出来た」とステージを終えた。

 水島監督はトーク中に「ようやく3DCGで作品として成立するものがでてきたって、作品を見てる人も思ってるんじゃないかな。まだ手描きに追いついたってレベルなんで、これから先、どんなものを見せてもらえるのか、自分もやんなきゃいけないと思いますし、ほかの現場がやるのを見るのも楽しみですね」とも語っていた。今後のメイキングに関しては、11月23日の「CGWORLD 2014 クリエイティブカンファレンス」でもスタッフの講演がある。作品を見た後ならさらに理解が深まると思うので、気になったら聴講しておきたい。
(取材・文/真狩祐志)

■『楽園追放 -Expelled From Paradise-』
http://rakuen-tsuiho.com/
■練馬アニメカーニバル2014
http://animation-nerima.jp/event/carnival/carnival2014/

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