~私は如何にして心配するのを止めてYUIMETALを愛するようになったか~第3章

BABYMETALの“メタルレジスタンス”を追う―今、会えないアイドルに今、会いに行く 

 YUIMETALは当然、“世を忍ぶ仮の姿”の「水野由結」としての側面を持つ。15才の中学3年生のトマト大好きな女の子が、世界各国のメタルバンドが集うイギリスのSonisphereフェスティバルで65,000人の観客の前に立つ。アメリカで世界的ポップスターのレディー・ガガとツアーを回る。それは全校集会で前に立つのとはワケが違う。彼女は映画の登場人物でもアニメのキャラクターでもない。生身の女の子が世界を相手に立ち向かうことに、苦悩や葛藤がないはずがないだろう。

 でもステージでは一切そんな素振りを見せない。MCがない分、歌とダンスだけで結果を残す。大人たちが日々の生活の中で発する、「辛い」「苦しい」「悲しい」「死にたい」といった弱音が聞こえない。すべてを通り越した先にあの笑顔がある。キレッキレのパフォーマンスにどれほどの日々を重ねたのだろう。当然、昨日今日で得られる完成度じゃない。そのプロ意識は狂気すら感じさせる。だから海外で認められるのかも知れない。

なぜ、私はYUIMETALが好きなのか?

 メタルのサウンドに似つかわしくないBABYフェイスと、重厚な生演奏と堂々と肩を並べる激しいダンス。これ以上ないってくらいの見た目とのギャップ。目に見えない努力と覚悟がすべて「かわいい」に集約されている。その「かわいい」はかっこよさから成り立っているものだと改めて教えてくれるからだ。それは私に全然足りない。生活の中にいつもMCがある。言葉を発せられる分、すぐに弱音を吐いてしまう。ツイートしてしまう。シェアされる。慰められる。YUIMETALのかっこよさには到底及ばない。果たして、こんな大人でいいのだろうか。

 昨年7月の目黒鹿鳴館でのライブ。小さいキャパの会場だったが、チケットが抽選で奇跡的に当たり、前の方で観る機会に恵まれた。間近で観るYUIMETALに息を飲む。一瞬、彼女と目が合った。でも、なぜか恥ずかしくなってすぐに目を逸らした。「こんな大人でごめんなさい。」そんな気持ちになってしまった。

 時折、不安になる。YUIMETALの目に、熱狂する大人たちはどう映っているのか。汗だくでよく分からない液体が顔中に付着し、前髪が張り付く。そんな大人たちが阿鼻叫喚するような光景は、ひょっとしたら地獄絵図じゃないのか。妖怪大戦争になっていないか。いくらそこに愛があろうとも、思春期の女の子がどう思うのか。その恐ろしさはさすがに妖怪のせいにはできない。

 大人は簡単に成長できない。対して、成長期真っただ中ですくすくと心も身体も成長していくBABYMETAL。トマトをどれだけ食べても成長できない大人の私が彼女たちを観ることで、少しでも成長したい。いつか、YUIMETALと目が合っても堂々と目を見たい。というか、目が合ったのが勘違いだったらごめんなさい。

 ステージにすべてをぶつける。言葉はいらない。そこにしとしとと感情が降り注ぎ、止まない言葉となり、今文章を書いている。足りないものを補うように、眠くなったら寝る。お腹がすいたら食べる。元気がなければYUIMETALを見る。これを三大欲求として捉えたい。

 終末感溢れる絶望的なストーリーとメタルを扱ったBABYMETALでも、そこにはメンバーそれぞれの夢が詰まっている。大きな舞台で歌いたいというSU-METALの夢、かつてSU-が在籍していた「可憐Girl’s」に憧れてアイドルの道を歩んだYUIMETALとMOAMETALの夢。YUIとMOAはさくら学院の入学試験で可憐Girl’sの『Over The Future』を踊った。そしてその2年後、SU-と同じステージでこの曲を披露した。

 夢、未来、希望。こんな世界にまだそんなものは残っているのだろうか。でも、次々と夢を叶えていくBABYMETALの3人がそれを表すのなら信じてしまいたい。絶望に慣れすぎた大人が夢を見る余地は、BABYMETALにまだ残されている。これが「アイドル」なのかも知れない。今すぐに会いに行けないが、遠くから確かに光を放っている。暗闇の中でこそ、その光は強く感じる。見上げるほど、夜空に光る星のように憧れてしまう。

 そのすべての始まりとなった母体アイドルグループ・さくら学院は偉大だ。噂によるとつい最近、水野由結はさりげなく小石を蹴り飛ばす仕草をしたらしいじゃないか。そんな歴史的かわいい瞬間を逃すようならYUIMETALを語ることなんてできない。いい加減、さくら学院のライブに行かなければならない。しかしながら、いつも自問自答してしまう。

「なぜさくら学院を観に行かない?」
「いや……私はBABYMETALが好きだから……」
「ならばなぜお前はさくら学院の学院日誌を読んでいる?」
「はっ……!」
「正直になれ」
「ううう……」
「さあ」
「あああ……」
「精神を解き放つのだ!」
「トマトーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

決めた。私は今度、さくら学院のライブに行く。
これも一つの“メタルレジスタンス”だ。
言い訳だが。
(文/竹内道宏)

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竹内 道宏(a.k.a. たけうちんぐ)ライター/映像作家
さまざまな媒体で音楽系、映画系、体験系の記事を執筆中。
映像作家として神聖かまってちゃんなどのライブ映像を撮影し、YouTubeにアップロードする活動を行っている。
また、映画監督として初監督作品『新しい戦争を始めよう』は現在DVD発売中。次回作は、大阪のアイドル・いずこねこ主演『世界の終わりのいずこねこ』。
現在はすべてを放り投げるほどBABYMETALに身を投じ、命ある限り行く所まで行くつもりです。YUIMETAL最高!!!
■たけうちんぐダイアリー(ブログ)http://takeuching.blogspot.jp/

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