~私は如何にして心配するのを止めてYUIMETALを愛するようになったか~第3章

BABYMETALの“メタルレジスタンス”を追う―今、会えないアイドルに今、会いに行く 

 アイドルにまったく興味なかった。なのにどうして、私はYUIMETALの大好きなトマトを食べて物思いに耽っているのか。これは、BABYMETALに身を捧げた31才独身男の“参戦”の記録である。

1410_babymetal_3_1.jpg(イラスト/竹内道宏)

■「今会えないからこそ、想いが募る」

BABYMETALが海外から帰って来る。すなわち、YUIMETALが日本にやって来る。

9月、晴天の休日。

 JR新木場駅は秋の行楽に向かう人々で賑わう。彼らの行き先を大きく分けると、ディズニーランドとBABYMETAL。夢の国に向かう人々と明らかに顔つきが違う。目的が違うのだ。舞浜駅で降りる人々はネズミの元へ、海浜幕張駅で降りる人々はキツネ様の元へ。私は全世界チェーンのアミューズメントパークに匹敵する、全世界で猛威をふるうBABYMETAL(メタルレジスタンス)のアミューズ(事務所)パークを選んだ。ミッキーマウスではなく、YUIMETALを求めていた。どちらも「かわいい」という意味では同じだろう。

 彼女たちのレジスタンスはフランス、ドイツ、イギリス、アメリカ、カナダと海を越えた。7月から始まったワールドツアーの最終地点がここ、幕張メッセ・イベントホール。2日間に渡って行われるワンマンライブのチケットはすぐに完売した。今年3月の日本武道館以来、ファンクラブ公演とサマーソニックを除くと実質半年ぶりの国内のライブはもはや「来日公演」と呼ぶべきか、“今、会えない”という飢餓感を煽っていた。

 YUIMETALをこの日本で、しかも電車で観に行くことができる。海外公演を観るために飛行機で12時間かけて向かったロンドンのライブとは違う。ほんの数時間の移動距離が近所のコンビニに行くくらい身近に感じる。しかし、そこで得られたのは温かいお弁当ではない。熱い炎が吹き荒れたのだ。

 爆撃音のような演奏とともにライブはスタートする。3人が現れると大歓声が起こる。それは半年前のライブとはまた違い、海外での武者修行を終えた彼女たちはどこか自信にみなぎっていた。小さいはずのYUIMETALが大きく感じたし、そもそも実際に身長が伸びていた。ライブは次々と最高を最高で更新する。これがワールドクラスのパフォーマンスか。そしてYUIMETALはかわいい。結局、これに尽きる。

 始まる時、ゾクゾクッと鳥肌が立つ。毎回が「何か大変なことが起きそう」って雰囲気になる。幕張メッセの真っ暗闇にBABYMETALの赤が着色する。開演前の緊張感が爆発し、アリーナは戦場と化す。人が波のように前方に押し寄せて、中央は台風のように巨大なサークルモッシュが巻き起こる。

『BABYMETAL DEATH』でステージ後方の巨大画面に3人の姿が3分割で映る。それぞれが両手をフォックスサインでクロスし、熱狂する人々を静観する。美しいシンメトリーで形作られたフォーメーションはその後崩壊し、激しくのたうち回る。静と動、その両極端に痺れるのだ。どこか整然としながら猛然として、慎重なのに大胆な性格をしている。A型もB型もO型もAB型も混在する。すなわち全人類に共通するステージを、やがて20数本の火柱が取り囲む。吹き荒れる炎はステージから離れていても熱を感じる。それは異国の地へ旅立ったBABYMETALにも言える。遠く離れていても熱気が伝わってくる。海外のファンが現地で撮影したYouTube動画を通して、その距離がより一層想いを募らせる。だから本人たちが目の前に現れるその瞬間、「神降臨」って言葉が大袈裟ではなくなるのだ。

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