真実を見せるために“残酷な描写”も! 子ども向け番組『まんがはじめて物語』の苦労が明かされる

2014.10.30

『まんがはじめて物語』公式サイト(TBS CS[TBSチャンネル]内)より。

 10月28日に放送された『林先生の痛快!生きざま大辞典』(TBS)で、1978年から1984年の間にTBS系で放送された教養番組『まんがはじめて物語』が特集され、当時のスタッフの苦労などが明かされた。

『まんがはじめて物語』は、“世の中の初めてを紹介する”というテーマで、土曜夕方5時半~6時という放送時間にもかかわらず、28.5%の最高視聴率を叩き出した子ども向け番組。「クルクルバビンチョ パペッピポ ヒヤヒヤ ドキッチョのモーグタン」というタイムスリップするときの呪文が子どもたちの間で流行したり、番組内容が評価され「文化庁子ども向けテレビ用最優秀映画賞」などを受賞するなど、当時、社会現象並みの人気を誇っていた。

 番組の特徴は、当時としては画期的だった“実写とアニメの融合”。お姉さんと番組キャラクターのモグタンが、実写パートから過去にタイムスリップするとアニメパートになり、いろいろな“初めて”を調べるという内容だ。

 番組では『まんがはじめて物語』を知るため、“教養番組で革命を起こす”“真実を見せる”“スタッフの知恵”というキーワードに沿って、その内容を紹介。

“教養番組で革命を起こす”では『まんがはじめて物語』が、当時では革命的だったという“圧倒的な情報量”を見せ、鉄道、電話、自動車などといった500種類以上のテーマを子どもたちにわかりやすく伝えていたと紹介。

 その一例として紹介された「バス」の回では、「明治36年に広島市で初めてバスが走った」「関東大震災で電車が走れなくなり、800台のバスが製造された」「日中戦争でガソリンがなくなり、木炭で走るバスが作られた」など8分間で16個もの情報が詰め込められていた。また、「防犯」の回でも7分間で15個と、子ども向けの番組とは思えない情報量。こういった濃い内容の背景には「自分が知らないことを調べるのは面白い」という当時のスタッフの信念があったという。

 ほかにも、「自分が面白いと思って調べた情報は他人も面白い」という考えが反映された「大人が面白くないと思うものは、絶対子どもは喜ばない」というスタッフのスタンスが紹介され、当時、番組のお姉さんを務めていた女優の岡まゆみ(2代目。初代はうつみ宮土理)とモグタンも登場。ここでは、番組MCの林修が岡のガチファンぶりをアピールする場面も。

 続いて“真実を見せる”で紹介されたのは、番組プロデューサーの「子どもだましの番組ではなく『本物を見せる番組』を作る」という信念。「捕鯨」がテーマの回では、アニメと実写両方で、鯨の殺し方などを血が流れる様子まで紹介。また国際捕鯨委員会(IWC)の設立についてや鯨を保護する理由も解説するなど、子ども向けとは思えない内容だったが、当時は残酷な描写にもクレームはほとんどなかったという。

 そして“スタッフの知恵”では、“実写とアニメの融合”について「(タイムスリップ後の紹介VTRを実写で撮影する)予算がなかったから」という背景や、「子どもたちに夢を与えるために裏方を見せないことを徹底した」ということが紹介された。

 また、口から下が透明のビニールになった特別仕様のモグタンが登場し、両手を使ってモグタンの口と手を動かしている様子が見せられた。当時、モグタンを動かしていた人はずっと1人で、岡によると原田さんという方らしい(声優は別)。また、棚の上のものを取るときはモグタンの胴が伸びたりと、決して人の手を見せないように苦労していた様子が当時の映像と共に解説された。

 子ども向けとは思えない密度の高い情報を伝え、真実を伝えるためなら残酷な描写もいとわなかった『まんがはじめて物語』。池上彰の名を知らしめた『週刊こどもニュース』(NHK/2010年放送終了)など、硬派な子ども向け教養番組は根強い人気を誇る。番組の中で林は、「大人たちが見て面白い、また残酷だと思うことを(子どもに)世の中の真実として伝えることは今のほうが失われているのでは」とも語っていた。そんな時代にこそ、ぜひモグタンに復活してもらいたい。

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