女子中高生マーケットも伸長! 「アニメ産業レポート2014」刊行記念セミナーが明らかにした“今のアニメ業界”

2014.10.31

「アニメ産業レポート2014」刊行記念セミナーの様子。

 10月17日、デジタルハリウッド大学にて「アニメ産業レポート2014」刊行記念セミナーが開催された。このセミナーは9月12日に一般社団法人日本動画協会が刊行した同書のガイダンスとしての位置づけとなっている。

 登壇者は増田弘道さん(ビデオマーケット取締役)、氷川竜介さん(アニメ・特撮評論家)、数土直志さん(「アニメ!アニメ!」編集長)、陸川和男さん(キャラクター・データバンク代表取締役社長)、森祐治さん(電通コンサルティング取締役シニア・ディレクター)、小野打恵さん(ヒューマンメディア代表取締役社長)と、各執筆者が一堂に会した。

■パッケージの鈍化から配信の純増へ 女子中高生マーケットの伸長も好機?

 まず増田さんが、前年2013年のアニメ業界におけるテレビ・映画・ビデオパッケージ・配信・商品化・音楽・海外・遊興・ライブといった売り上げを、図表で示しながら“ユーザー市場”と“スタジオ市場”で比較する(“スタジオ市場”というのは、主にアニメ制作会社の売り上げを指す)。前者が1兆4913億円であるのに対し、後者は1834億円で、増田さんは後者の規模が意外と小さいと指摘。この理由については、アニメ制作会社の多くが中小企業であるため、と図表に記されていた。

 その後、増田さんは各登壇者に話を振るかたちで進行。まず、ビデオパッケージの売り上げについて、データでは2006年をピークに08年まで一旦下がったものの、同年から横這いが続いている。そんな状況の中、10年から制作分数(制作されたアニメの尺を“分”で計上)が再び増えてきていることについて、氷川さんは原因がつかめていないものの、ゲームなどの総体的な入れ替わりではないかと推測し、配信などビデオパッケージ販売以外の目的で制作されている作品の増加も挙げた。数土さんは制作分数が増えているのは、ラインを空けることなく回せていけている証拠だとする。また、中国への配信権販売の大きさも無視できなくなっていることにも触れた。

 続いて話は、アニメのビデオパッケージ販売に東宝など参入する会社が増えていることに関して。氷川さんは、東宝といった映画配給会社であれば、テレビでヒットした作品を映画にすることで、シネコンを有効活用する一環としての意味合いもあるとする。数土さんは、音楽・ソーシャルゲーム・映画といった昨今のメディアミックスを受けて、配給を持つ会社などが深夜アニメの製作委員会に参入する強みを補足した。また数土さんは、昨年からアニメ化大賞やぽにきゃんBOOKSなどを開始したポニーキャニオンの動向にも注目している。同社はコンテストやライトノベルなど、自社オリジナル原作や商品化窓口と、ビデオパッケージ以外での収益を模索しているためだ。

 次に陸川さんが、キャラクタービジネスからの視点を展開する。キッズ・ファミリー向けの定番キャラによるマーケットは大きいが、2013年で見るとシェアを落としてきている。代わりにシェアを伸ばしているのが、女性の中高生のマーケットだという。これまで中高生は思春期を迎えると、興味の対象が他に移ったり、子供っぽいという印象でキャラクターグッズを買わなかったりと、一般的にシェアが小さかった。しかし最近では、ディズニーやサンリオなどにアニメのキャラクターグッズが続いてきているという。ちなみに今年2014年は統計の途上であるが、キャラクターグッズ販売のシェアについては『妖怪ウォッチ』や『アナと雪の女王』で大半が占めるように見受けられた。

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