“大人は判ってくれない”けれど…当たるかコケるかが事前にわかる、映画版“ラプラスの魔”システムが爆誕!?

 世界のバイヤーと日本のコンテンツ産業とのビジネスマッチングの場である「TIFFCOM」が、10月21~23日の三日間開催された。

 この催しは東京国際映画祭との併催で、日本の音楽・映画・テレビ・アニメーションの4つのコンテンツのビジネスマッチングやセミナーなどを行うイベントだ。

 この催しの中で、今回取材班が注目したのは「映画の収益性を予測するーデータサイエンスが刷新するコンテンツビジネス」というセミナーだ。いったい、どういうものかといえば、蓄積したデータを用いて「特定の映画がどれだけの収益を得られるか」を分析できるというもの。本当にそんなことが可能ならば、公開する前から映画が成功するかコケるかがわかってしまうというわけである。

 にわかには信じがたい……が、まずは話を聞いてみないと始まらない。心の内で「アポロは月に行った」等々を念じつつ、セミナーに参加することにした。

 このシステムを開発しているクランチャーズ株式会社CEOの石井大地氏によれば、このシステムは867本に及ぶ映画作品から解析を重ねた結果、生み出されたものだという。そして、解析の結果をもとにして生まれたシステムにおいて、映画の興行収入は、大きく「プロモーション(公開直前)」「口コミ(公開後の伸び)」「休・祝日(ブースト)」という3つの要素を軸にして60のチェック項目で、予測できるという。さらに、石井氏は「これは方程式」なので、興行収入の目標からプロモーション、口コミのどちらに比重をおけばよいかなどの戦略を立てることもできるという。

 すでにシステムは完成していて、個人アカウントは99ドル、サポートを追加した企業アカウントは499ドルで11月から日本国内でのサービス提供を開始するという。

 にわかに信じがたいシステムだが、プレゼンの中で石井氏は既存の公開作をサンプルとして、システムがはじき出したデータと実際の興行収入を示し、ほとんど誤差がないとした。

 これは、今まで勘や経験則に頼っていたことをすべて駆逐してしまうのではないか。そう思って石井氏に聞いてみたところ、まだまだ課題はあることも見えてきた。例えば、アニメについてがそれだ。これまで分析に使用した映画は国内外の実写限定であり、アニメについては新たに分析し、チェック項目も見直す必要があるという。また、客足に影響を及ぼすといわれている天候や季節の影響も考慮されていない。さらに、あくまで日本国内でのデータなので、国や地域ごとにデータの分析を行う必要もある。ただ、その点は石井氏も認識しており、完成した無謬のシステムではなく、上映される作品を都度検証しチェック項目も変更していく予定だという。

 また、11月からリリースを開始することになっているが、現状のシステムでは予測が困難な映画があることも石井氏は隠すことなく説明してくれた。

 現状のシステムでは、全国で大規模に公開されるものか、単館上映作品は正確に分析できるとしているものの、全国7、8~10館と少数の映画館で上映される作品の場合には予測が最も困難だという。

 実は同社CCOの松本准平氏は、セミナーを前に自身の監督作『最後の命』が、2014年米チェルシー映画祭で最優秀脚本賞を受賞。11月8日から全国劇場で公開予定となっている。この作品の公開映画館の数は、システムが最も予測を苦手とする数。そこで「『最後の命』は予測できたのか?」と聞いたところ、石井氏は「それが一番難しいんです」と率直に答えてくれた。

 当の松本氏にも「システムは本当に有効なのか?」を聞いたところ、セミナーの後半にパネリストとして登壇した『スワロウテイル』や『南極物語』で知られるプロデューサー・河合真也氏の「映画の興行収入予測や成否は、経験と勘が大きく左右するものです」という発言を意識してか、次のように語った。

「大人はなかなか受け入れ難いでしょう」

 信頼性を高めるためには、まだまだアップデートに膨大な時間を要すと思われるシステム。とはいえ、企画を通すための説得ツールとしては、有効なのかもしれない。どうも、ビッグ錠先生をはじめとする職人系対決マンガの影響か、“コンピュータ=悪”を深層心理まで刷り込まれていた筆者。これは……もしかして、信じていいのかも?
(取材・文/昼間 たかし)

大人は判ってくれない/あこがれ Blu-ray

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映画界の不確定性原理への挑戦である。多分。

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