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過去のビジネスモデルから脱却なるか!?  サンライズ社長がセミナーで語った「日本国内と海外のガンダムのビジネス展開」

2014.10.29

■『UC』の展開事例 映像・マーチャン・イベントやライブの利益率を均等に

【質問】出版社系【原作もの】でないオリジナル(アニメ作品)を展開する場合のポイントは?

宮河「テレビが一番(コストが)安いメディアで、日本では伝達能力に優れている。まだまだコスト面からだと、配信で数百万人が見るほうがテレビより高いと思っている。テレビは枠や時間が限られているので、それをどう組み合わせていくのかが重要なポイントかと。以前はウィンドウ期間【編注:コンテンツの活用期間をずらす“ウィンドウ戦略”における期間のこと】があって、映画の数カ月後にパッケージ、またその数カ月後にテレビ放送、ネットはさらにその先(に流通する)というのが普通だった。どんどんウィンドウ期間が短くなってる典型だと思ったのが『アナ雪』。ロングランだったというのもあるけど、公開の途中でパッケージが出て、ものすごく売れ行きが良かった。『UC』はイベント上映という形式だけど、映画館で見た客だけがBDを買えるようにして、映画と同じ金額でネット配信した。最初は1万枚くらいしか売れなかったが、最終的に3万枚くらい売れてる。配信も7話は10万人くらいが見てる。1話1000円なので金額的に1億円と、そんなに大きな数字ではないけど、映画と一緒にやってるからそんなに高くない。例えば(映画公開の)3週間後に配信だったら、そこまでいかないと思う。

 ビジネスの時には、自分がどうしたらいいか、どういう気持ちでいるかというのを大切にしていて、映画が好きでBDが欲しいと思っても、4カ月先になったら忘れてしまう。出ているのを知っても、興味は次に移ってる。単純な自分の疑問で、映画館で横(の売店)に売ってたら買うのに、なんでみんなやらないんだろう、という発想だった。数年前に大人の事情として話させてもらったが、それ【編注:即時的な販売】は規制が縛っているから。ウィンドウはそれぞれの会社の利益が確保されるという幻想のもとにあって、それをなくす時にすごく抵抗があった。映画会社から『映画館でBD売るとかネットも配信って何を考えてるんだ』って言われたが、『UC』で1話やったら物販が劇的に変わった。(以前は)映画館で7000円のものを買うってのは、ほとんどなかった。それがかなりの人がBDを買っていくので、売店の売り上げが変わった。7話では前夜祭パックとして、BD、パンフレット、限定プラモデルで1万3000円。これでどれだけ来るかなって思ったら、新宿バルト9のスクリーン全て埋め、大阪も含めて3000席を売った。映画はイベントだから1000円だったけど、前夜祭での実績も出たし、時代は変わったんだなと。

 サンライズでは、オリジナルはある程度クリエイターに委ねている。監督が強い作品とプロデューサーが強い作品の2つあるんだろうと。(対象となる)年齢層が高い作品に関してはクリエイターに委ねるが、とんでもない作品を作る人がたまにいるから、プロデューサーが軌道修正する。映像だけ売れてもビジネスとして成立しないから、マーチャンダイジングがどう動くかをクリエイターに話して、同時に動くようにしている。年齢層が低い作品に関してはプロデューサー主導で、マーケットに合わせながら作っていく。

 エイベックスの業績がいいので、その中身を見てると、“音楽”“映像”“イベントやライブ”が3分の1ずつになってる。(サンライズについても)今までは映像(の売り上げ)が8割くらいだったのが、それだけというのはやめようというので、“映像”“マーチャンダイジング”“イベントやライブ”を3分の1ずつにできれば。『ラブライブ!』はSNSゲームが好調なので(上記の)バランスが狂ってるが、大体3分の1ずつになっている。DVDが5万枚売れていてマーチャンダイジングやライブも健闘しているので、しばらくは3分の1ずつにしたい。5年前にグループ内にバンダイナムコライブクリエイティブを作ったのは、自分たちでライブの制作をして運営をすることで、より高い収益を上げていくため。おかげでアニメだけではなく年間300回のライブをやってて、非常に成績がいい。

 『UC』もPart.7の直前に1から6をテレビで放送した。これの視聴率が良かったのは話題になってて(作品を)知ってる人が多かったから。いきなりテレビでオリジナルをやるよりは、いろんなところである程度話題をつけてから、最後にテレビに持ってくというのもある。オリジナルの難しさはそこにあって、当然『(週刊少年)ジャンプ』で人気のものをアニメ化するというのは、認知度が高いので見てもらえる可能性は高い。サンライズの7割がオリジナルなので、まったく知らないもの、自分たちの作ったものをどうやって認知してもらおうかって、ほかのアニメ制作会社よりもリアリティーのある難題だと思う。だからこそサンライズは認知がないから、積極的に多メディアで同時展開していくのだろう」

 06年以降、パッケージ外収入の構築が急務であった中で、違法配信を逆手に取りつつ『UC』の成功例なども加わってきた。今回のセミナーの話を聞くと、制作においては難題が残るものの、ビジネスモデルに関しては、今まさに新たなモデルが確立されている最中だと実感できるのではないだろうか。
(取材・文/真狩祐志)

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