アニメ業界人が語る、ひそひそ秘話 【第3回】

もはや国内よりも上手い!? 中国・韓国への動画外注から見えてくる“国内アニメーター空洞化”問題

■人材育成に注力するスタジオもあるが……

 海外の動仕会社に頼ることは元来、逼迫したスケジュールを取り繕う苦肉の策でした。しかし前述した流れはもはや止められないものとして、一部では最初から海外動仕を前提にスケジュールと予算を組み、クオリティを担保しようとする作品も見られます。この傾向は今後さらに強まり“人材空洞化 → 海外動仕への依存を深める”という悪循環を生み出すことが懸念されます。

 少数ながら、京都アニメーションや富山県にスタジオを置くP.A.WORKSのように、地理的条件を生かしてアニメーターにあまり仕事をかけもちさせないようにし、そのぶん仕事をしっかり供給して生活と修練を両立させるスタジオもあります。囲い込んだアニメーターの仕事を途切れさせないようにするには、高いプロデュース能力が求められます。非常に志が高く、かつクオリティも獲得できている好例と言えるでしょう。

 ですが、このスタンスで「高クオリティのアニメを作ることで、流行を作り出す」可能性はあっても、「今、流行しているコンテンツのスピーディなアニメ化」に対応することは、フットワークの面で困難です。業界全体に彼らのやり方を行き渡らせるのは、さまざまな条件を鑑みても、やはり無理があります。

 人気マンガや小説、ソーシャルゲームなどのアニメ化は流行が冷めないうちに世に出す必要があるため、必然的にスケジュールは逼迫します。また、当たり外れの読みにくいオリジナルアニメも、出資者や局の思惑がからんで準備に時間がかかる上、作画クオリティまで要求され、制作後期にはやはりスケジュールが圧迫されやすい傾向にあるのです。

【まとめ】
 切迫するスケジュールといった問題などもあり、国内ではアニメーターが腰を据えて作品作りに取り組めないのがアニメ制作の現状。制作本数の高止まりが続くのであれば、アニメ業界において加速する“国内の人材の空洞化”への根本的な解決策は、筆者を含め、いまだ誰も見いだせていません。

■安康頂一
 仮名。都内某アニメスタジオに制作進行として勤務、現場の辛酸をベロベロ舐め尽くしたのち、同業別職種に転じる。現在はギョーカイの深海底でひっそりとコンテンツの明かりをともす、その日暮らしのチョウチンアンコウ。

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