“人がゴミのよう”に押し寄せる!? 猿島、友ヶ島、竹田城…乱立する“天空の城ラピュタ”が直面する問題とは

2014.10.18

「和歌山市観光協会」公式HP内「友ヶ島」ページより。

 近年、国内各地でスタジオジブリの長編アニメ映画『天空の城ラピュタ』に登場する天空城“ラピュタ”が目撃されるようになった。といっても、それはゲリラ豪雨をもたらす積乱雲のことなどではなく、同作にインスピレーションを得た遺構や遺跡を指している。

 目下、脚光を浴びているのは、神奈川県横須賀市の猿島や和歌山県和歌山市の友ヶ島である。いずれの島も、第二次世界大戦の戦跡が想像力をかき立てている。ちなみに猿島は、もともと『仮面ライダー』に出てくるショッカーの秘密基地としても知られていた。

 こうした観光資源としての地域再発見は、自治体にとってもまたとないチャンスである。しかし一方で、観光地化ではありがちな、押し寄せる人ゴミが残していくゴミの問題に直面している。猿島は来年4月から入島料を徴収することになった。友ヶ島も2年前から年1万人ペースで上陸者数が急増しており、いつ入島料が検討されてもおかしくない状況だ。幸か不幸か、現在の友ヶ島は唯一の発着場である桟橋が台風で損傷したことを受けて、定期便を運休中である。

 また、『天空の城ラピュタ』だけに、むろん「天空」もキーワードになっている。“天空の城”としては、兵庫県朝来市の竹田城が近年の“ラピュタ”ブームの火付け役として筆頭に挙がる。

“天空の城”竹田城への入城者数は2006年、日本100名城に選定されたことを契機として増え始め、11年に10万人を突破。さらに、高倉健主演でロケ地となった12年の映画『あなたへ』が公開、同年「恋人の聖地」認定されたことなどを追い風に、昨年は50万人超の入城者数を記録した。

 人気が盤石になるのとはうらはらに、観光客の増加によって土台の石垣は貧弱になっていく。こうした影響から、12年に竹田城のある朝来市は産業経済部に竹田城課を新設。その後、昨年10月に入城料の徴収を開始し、観光ルートの指定、立ち入り制限など、保全に取り組むようになった。

 一方で、こちらも“天空の城”として人気を集めつつある岡山県高梁市の備中松山城は、城跡である竹田城とは異なり、天守閣も込みで楽しめる。また、このところ三重県熊野市が赤木城、福井県大野市が越前大野城を“天空の城”としてPRを開始した。越前大野城も天守が残る備中松山城タイプだけに力が入っている。このほか熊本県阿蘇市のラピュタロードなども存在し、今後もラピュタにちなんだ名勝が各地で増えていきそうである。

 ちなみに、“ラピュタ”という名前の元ネタとなった架空の旅行記『ガリバー旅行記』は、浮遊島こと“ラピュータ”がスペイン語の“La Puta(=淫売婦)”に由来して名付けられるなど、皮肉を交えた書物として知られている。本作の主人公・ガリバーは、江戸にて将軍と謁見、長崎より帰国と、日本にも足跡を残している。

 ガリバーが入国した土地“ザモスキー”は神奈川県横須賀市の観音崎ともいわれ、09年にはガリバー上陸300周年としてイベントも開催された。その延長として、同じ横須賀市の猿島を“ラピュタ”に見立てられるかもしれない。しかし、やはりこうした景勝の景観を損ねないように努めていきたい。ガリバーが訪問した当時、日本はヨーロッパよりも衛生面で秀でていたことで有名だったのだから。
(文/真狩祐志)

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