“Animation”で世界と渡り合う水江未来、国際映画祭デビュー10周年!インタビュー【前編】

■細胞モチーフの始まり そして第10回広島フェスにノミネート

1410_mizue_fanta.jpg『Fantastic Cell』より。

 03年、水江さんは『Fantastic Cell』を完成させる。現在に至る細胞をモチーフとしたアニメーション作品群が、ここから始まった。まず『Fantastic Cell』は、『デジタル・スタジアム』の手塚眞セレクションに入った。

水江「手塚さんは今回(第15回)の広島フェスに『森の伝説 第二楽章』のワールドプレミアもあって来てたので、改めてご挨拶できて良かったです。普通の公募展では、ギャラリー展示ができるARTBOX大賞ってのに『Fantastic Cell』を出してみたら、久里洋二賞をもらいました。後で久里さんがARTBOXで個展をやってた時に挨拶に行ったりとか、それからずっと(人の縁が)つながっていったんですね。(ラピュタアニメーションフェスティバル2003の)第4回ユーリ・ノルシュテイン大賞で『Fantastic Cell』が観客賞となった時には、人形アニメーション作家の故・川本喜八郎さんが客席で見てて『君のが一番よかった』って握手してくれたりとか、大御所の人たちが後押ししてくれたというか、『面白い』って言ってくれたのが、作って発表しようっていう励ましになってました。大学での講評会で作って発表して終わりじゃなくて、外の世界に作品を見せてくことで、色んな反応がある面白さに魅了されましたし、作品は発表して完成する感じですね」

 この当時03年から05年にかけて国内の映画祭やコンテストを賑わせていた作品には、吉浦康裕さんの『水のコトバ』、赤木沙英子さんの『しももも』、新海岳人さんの『夢』、いしづかあつこさんの『引力』、岸本真太郎さんの『Tough Guy!』、早川貴泰さんの『可畏キモノ』、児玉徹郎さんの『MY HOME』、塚原重義さんの『ウシガエル』、大山慶さんの『診察室』、青木純さんの『コタツネコ』、坂元友介さんの『電信柱のお母さん』などがあった。

水江「在学中(に出していたコンペ)は国内でしたね。広島フェスは第10回(04年)に同じく『Fantastic Cell』でノミネートされたんですけど、海外【註:国際アニメーションフェスティバル】という意識ではなくて、国内で一番大きな映画祭ってイメージでした」

 広島フェスは1985年からの隔年開催で、第3回以降は偶数年の開催になっている。コンペティションは他のフェスティバルとは異なり、長編作品の募集は行っていない。ちなみに、先の坂本サクさんも第8回(2000年)に『摩訶不思議』、第9回(02年)に『フィッシャーマン』がノミネートされている。

 広島フェス第10回のグランプリは、序文でも触れた山村さんの『頭山』だった。この年、同じくグラフの作家のノミネート作には、デビュー賞を受賞した細川晋さんの『鬼』、国際審査員特別賞を受賞した鮎澤大輝さんの『Loop Pool』があった(ちなみにこの年、筆者は、第9回に『スキージャンプ・ペア』でノミネートされた真島理一郎さんとブース出展していた)。

水江「ただ国内(向けのコンペ)だと、当然1つの国の中ですから評価される場が限られてる。映画祭はともかくコンテストだと何回も賞を獲ってる人はもらえなくなってくるんです。コンテストは登竜門ですから、新しい人を発掘する側面がある。一方、巨匠から若手までが競う場所が国際映画祭なんだっていうのがだんだんわかってきて、そこにシフトして作品を作ろうって感じになってきました」

 後編では、水江さんが世界4大アニメーションフェスティバルから3大国際映画祭へと競う場所を変えていく、その真意に迫っていく。
(取材・文/真狩祐志)

【後編はこちら】

■水江未来(みずえ・みらい)
アニメーション作家。1981年生まれ。多摩美術大学大学院グラフィックデザイン学科でアニメーションを学ぶ。「細胞」や「幾何学図形」をモチーフにした抽象アニメーション作品を多数制作し、各国の国際映画祭を渡り歩く。このほか短編アニメーションの上映会「TOKYO ANIMA!」の実行委員も務めるなど幅広く活躍中。
「MIRAI FILM」<http://miraifilm.com/

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