書泉グランデの騒動から見える、新たな「表現の自由」をめぐる問題

1409_shosen.jpg書泉公式ホームページより。

 あらゆる分野のオタクのオアシスともいえる神保町の書店・書泉グランデで「表現の自由」をめぐる騒動が勃発し、注目を集めた。

 書泉グランデは、神保町と秋葉原に店舗を持つ有名小売り書店・株式会社書泉の一角を担う店舗だ。その中でも書泉グランデは、鉄道・車・バイク・格闘技など、あらゆる分野のマニアックな本が揃う書店として知られている。2011年にアニメイトグループに買収されてからしばらくは棚に混乱も見られたが、現在はそれも落ち着き、マニアな情報を得るには欠かせない書店として継続しているのである。

 そんな書店での騒動のもとになったのは、公式Twitter(@shosengnd)でのツイートだ。

 9月23日、このアカウントで「在日特権を許さない市民の会」の会長として知られる桜井誠氏の著書『大嫌韓時代』(青林堂)を紹介する「隣国が嫌いな方、なぜ嫌われているのか気になる方や、植民地支配、戦勝国気取り、領土問題、反日、それらについて疑問をお持ちの方にオススメ」という投稿がなされた。

 ところが、このツイートに対して「レイシズム本を肯定的に宣伝した」などという批判が殺到。同社は当該のツイートを削除すると共に謝罪に追い込まれたのである。

 書店が入荷した書籍の内容紹介をTwitterで行うのは、ごく当たり前に行われていること。ところが、今回の騒動ではそれ自体が批判を浴びているというわけだ。

 Twitterなどでは書泉グランデへの批判を支持し「レイシストを支持する書店は利用しない」など、同書店自体への不買運動を呼びかけるツイートが多数ある。ところが、これが「表現の自由」に関わる由々しき問題だと気づく人は少ない。「反ヘイトスピーチ」の側からすれば、桜井氏の著書を「許せん!」という気持ちがあることも理解できる。しかし、自身の気に入らない表現に対して、流通サイドに圧力をかけてその存在を潰していくという手法には疑問を感じざるを得ない。

 昨年発生した『黒子のバスケ』をめぐる脅迫事件でも「作者に恨みがある」と主張する犯人は書店に脅迫状を送り、『黒子のバスケ』関連商品の販売自体を自粛させるという行為を行ったわけだが、単なる商品紹介に「抗議」をしている人は、それと似たような行為をしているということに気づいていないようだ。もはや混迷の中で「反ヘイトスピーチ」を唱える人々もミイラ取りがミイラとなっているといえまいか。

 気に入らない本を売っている、それをオススメしているからと書店に抗議していれば、いずれは泥仕合になるのがオチである。現在、書泉グランデは、新左翼関係の書籍も多く販売していて、革マル派系のこぶし書房が出版している「こぶし文庫 全60巻完結 記念フェア」を開催中だが、革マル派の本を売っているからといって、対立する中核派やら解放派やらが抗議したという話は聞かない。

「反ヘイトスピーチ」を主張する人々は、昨年来「ヘイトスピーチ」の法規制を主張していた。これは、やがて「ヘイトスピーチ」の枠を超えて「表現の自由」を縛る法律になるという指摘は、早い時期からなされていた。しかし、彼らはそうした批判をまともに取り合おうとしなかった。その結果、現在、政府与党が進める法規制は「表現の自由」を縛るものになろうともしている。

 こんなことを何度繰り返せば気がすむのだろうか?
(文/昼間たかし)

大嫌韓時代 (SEIRINDO BOOKS)

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宣伝すると怒られるそうなので、ノーコメントで。

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