Kindleでも読める30年前の名作プレイバック 第16回

『遊星からの物体X』のパクリだとかしたり顔で言うな!ありがちな設定を新しい物語へと昇華させた『寄生獣』の魅力

 そもそも身体に他の生物が住み着く……というアイデア自体新しいものではない。

『ウルトラマン』は、科学特捜隊のハヤタ隊員を死なせたことを償うため、ハヤタ隊員と一心同体になって蘇らせたわけである。

 漫画だと『みんなあげちゃう』でおなじみの弓月光の『エイリアン1/2』は大やけどを負った主人公を救うために、アメーバタイプの宇宙人が主人公の皮膚になって生活している話だ。話は全然違うが、設定だけ見たら似ていると言える。

『寄生獣』が素晴らしいのは、ありがちな設定で誰もが考えつきそうなアイデアを、今までにはなかったビジュアル、物語に昇華させた点なのだ。全くの影響を受けずに作品を作れる人は、ほとんどいない。そして影響を受けずに作った作品が面白いとは限らない。

 ぶっちゃけ、だいたいの作品にはネタ元があるのだ。それがたまたまわかったからって、偉そうにはしゃぐなって話である。

『寄生獣』では、物語の途中で主人公が超人的パワーアップをする。これはおそらく、とても熟考した上での決断だったと思う。主人公の成長は、否応なしに読者を引きつける。しかし、成長させた結果、凡庸な漫画になってしまう場合もあるからだ。

『GS美神 極楽大作戦!!』では、主人公・美神令子のアシスタントであり、煩悩のかたまりのようなキャラクター横島忠夫(実質的に主人公になる場合も多いキャラクター)が、そのほかの特殊能力を持つキャラクターの中でいかに頑張るかが面白ポイントだったのだが、結局途中からドンドン霊能力を身につけさせてしまった。つまらなくなった……とまでは言わないが、横島忠夫においては、当たり前のキャラクターになってしまったと言えるだろう。

 漫画の中では普通の人間こそ、珍しい存在なのだ。

『寄生獣』では、主人公がパワーアップした喜びよりも、力を得るきっかけに大事な人を失ったことや、心の一部が変わってしまったこと……という哀しみの側面の方がより大事に描かれたため、物語の重厚感を失わなかった。物語的にも、矛盾がなく、すんなりと受け入れることができた。

 こうして、『寄生獣』は最終巻まで、緊張感あるシネマティックな展開が続く。

 そうそう、8巻でとあるキャラクターが亡くなる話が出てくるのだが……その回だけは何回読んでも泣ける。このルポを書くために、先ほど読み返して、また泣いている有り様だ。しかし、どうしてそんなに泣けるのか、よくわからない。単純なお涙頂戴ではない何かがあるような気はするのだが、僕が無能ゆえ説明できない。とても残念である。

『寄生獣』は昔から映画に向いていると言われてきた。そしてここにきて、アニメ、映画が連続して作られた。それはめでたいことなのだけど……まだ漫画『寄生獣』を読んでいない若い人には、ぜひぜひ原作から読んでいただきたい!!

 これは僕の個人的な原作愛からの意見なのだが、だまされたと思って、まずは1巻、Kindleで買っていただきたい。たぶん明日には全巻揃っていて、夢中で読んでいると思う。

●村田らむ(むらた・らむ)
1972年、愛知県生まれ。ルポライター、イラストレーター。ホームレス、新興宗教、犯罪などをテーマに、潜入取材や体験取材によるルポルタージュを数多く発表する。近著に、『裏仕事師 儲けのからくり』(12年、三才ブックス)『ホームレス大博覧会』(13年、鹿砦社)など。近著に、マンガ家の北上諭志との共著『デビルズ・ダンディ・ドッグス』(太田出版)、『ゴミ屋敷奮闘記』(鹿砦社)。
●公式ブログ<http://ameblo.jp/rumrumrumrum/

寄生獣 フルカラー版(1)

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