Kindleでも読める30年前の名作プレイバック 第16回

『遊星からの物体X』のパクリだとかしたり顔で言うな!ありがちな設定を新しい物語へと昇華させた『寄生獣』の魅力

2014.09.28

――今から30年前以上前、そう僕らが子どもだったあの頃に読みふけったマンガたちを、みなさんは覚えていますか? ここでは、電子書籍で蘇るあの名作を、振り返っていきましょう!

(イラスト/村田らむ)

 大学1年生の時、当時住んでいた寮から最寄りのセブン-イレブンで買い物をしたついで、単行本コーナーでふと1冊のマンガを手にとった。流行りの絵ではなかったが、なんだか気になる表紙だった。

 パラパラっと立ち読みをして……

「バツン」

とおばさんが頭を丸かじりされるシーンで、僕は完全に『寄生獣』のとりこになってしまった。

 お金はなかったけど無理して買って帰って、何度も何度も読み返した。寮でも話題になって、みんなで読んだ。

 漫画の単行本の第1巻というのは、基本的に密度が高い。物語の設定を説明しつつ、キャラクターも魅力的にアピールしなければならない。長期連載になるか、打ち切りになるか、かかっているのだ。気合も入る。中でも、『寄生獣』の第1巻は、際立ってよくできている。

 平凡な高校生である泉新一が寄生生物に右手を乗っ取られつつも共生していく話と、頭部を乗っ取られた人たちが人間を捕食しているという話が、過不足なく語られ、最後に激しくぶつかりあい、1巻が終わるのだ。2巻が発売されるのが待てない気持ちになった。

 もう語られつくされているとは思うが、寄生生物のミギーはとても良いキャラクターだ。客観的で冷静、すばらしく優れた頭脳を持っているのだが、それでも『人間ではない』。人間ではない存在を、ゾクッとする怖さを実に的確に描いている。これは、もちろんほかの寄生生物たちにも言える。

 余談だが、僕は養老孟司が好きで、よく本を読むのだが、たまに

「この人、寄生獣じゃないのかな?」

って思うくらい、客観的な意見を言う。髪の毛を引き抜いたら、うじゅうじゅ動くのではないだろうか?

 たまに

「『寄生獣』は『遊星からの物体X』のパクリじゃん〜。評価できないよね」

とかしたり顔でいう人がいる。

 確かに、『遊星からの物体X』のエイリアンと『寄生獣』の造形はよく似ている。1巻で犬が寄生生物になるが、これも『遊星からの物体X』のワンシーンから影響を受けていると連想できる。ほかにも、『遊星からの物体X』の監督である、ジョン・カーペンターの作品『ゼイリブ』は、人間と見分けのつかないエイリアンが、世界中に自然に溶け込んでいるのを主人公たちが気づくという話で、これまたとても良く似ている。

 おそらく影響は受けているのだろうけど、別にだからといって、『寄生獣』が読む価値がない漫画かというと、全然違う。考え方が間違っている。

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