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命運を握るのはわずか30万人!? “単価の高いファン”が命綱のアニメビジネス

2014.09.25

■テレビの“宣伝”としての力は健在! 今、アニメ制作者が抱える危機感

『2199』の展開の流れは、バンダイビジュアルから提案があったという。『機動戦士ガンダムUC』の成功を応用して、映画・ネット配信・パッケージ販売を同時展開、最後に“最大のリスク”であるテレビ放送と、従来の流れと真逆にしたのだった。しかし、すでに流通している作品のテレビ放送にCM出稿がつくかはわからない。そのため、郡司さんは「流すCMがなければピザ屋のCMにしよう」と、実際にI.Gの1階で同社が運営しているピザ屋「武蔵野カンプス」のCMを実際に作りそうになったという裏話も披露。最終的には、MBSに“最後にテレビ放送を持ってくる”戦略を認めてもらって、自社のCM制作は回避された。それから先の視聴率の変遷と関連させ、テレビ自体が見られなくなっていることにも言及。“テレビの時代の終焉”ということにしたいのかもしれないが、やっぱりみんなテレビを見ており、テレビが取り上げてくれないと作品の認知が拡散しないと、その必要性を強調した。

 アニメファンに対しての提言は、円盤の購入に限らない。郡司さんはコンテンツを取り巻く状況について触れ、「ものごとには全て原価があって採算が取れないものはなくなってしまうのに、コンテンツビジネスを論じる時は議題に上がらない」ことに疑念を抱いているという。

 ファンからよくある要望の一例にも「もっと広告を打てばいいのに→制作につっこんだお金の3倍かかる」「地方でもイベントをたくさんやってほしい→地方に行けば行くほど赤字」「こんなグッズを作ってほしい→例えばラバーストラップは原油と中国での人件費の高騰」と、そこまでたやすくない事情を明かした。需要と供給の関係で夜行列車がなくなっていく現象によく似ていることにたとえ、“ファンが普段から乗っていれば夜行列車はなくならない”と訴えた。

 コンテンツの宣伝をめぐる状況については、マザー・テレサの箴言「好きの反対は嫌いではない。無関心である」を取り上げた。ファンの間でやり玉に挙げられることも多いCV(キャラクターボイス)への俳優起用に関しても、ファンを怒らせるためではなくて、全く知らないものを見に来てもらうにはニュースにしてもらわないと始まらないと理解を求めている。

 おまけとして、映画の興行の内幕では、観客が訪れた時の上映回の混雑度よりも、座席数と1日の上映回数が重要になるといった説明も。座席数200、1日1回、90%であるほうが盛況に見えるものの、座席数500、1日6回、平均30%で一見少なく見えるほうが観客数が5倍になるという算段だ。

 最後に郡司さんは、ビジネスセミナーの参加者に向けて「アニメ番組のスポンサーになって、アニメビジネスの一端に参加してみましょう」と促した。全体的に赤裸々な印象を受けたセミナーだったが、このようにとっくに危機感を募らせた上でアニメが制作されていると知れば、さらに違った視点で作品を応援できるようになるのではないだろうか。
(取材・文/真狩祐志)

■京都国際マンガ・アニメフェア
http://www.kyomaf.jp/

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