“アニメ規制論”検証! 『TVタックル』をめぐり過熱した論争を振り返る

■“オタク像”のイメージ操作はなかったか?

 レッテル貼りの論法に関連して、筆者がもう1つ『TVタックル』で気になったのは、オタク趣味の人間に対して偏見を持たせようとした番組構成ではなかったかという点だ。

 というのも、『TVタックル』内で流れるVTRが“偏向したオタクイメージ”と感じられたからだ。個性的な少年少女キャラによる大火力の魔法・肉弾バトルがウリである『魔法少女リリカルなのは』シリーズから(時間にしてごくわずかな)幼女キャラの裸体シーンをわざわざピックアップする、いかにも言動や服装がテンプレオタクな男子3人組に“密着取材”して「恋愛対象は10歳!?」と画面に表示するなど、アニメオタク=ロリコンのイメージを前面へ押し出しすぎに思えた。

■「オタク叩き→炎上」で終わらせないために

 とはいえ、規制反対派の人たちが感情的になりすぎてもいけない。『TVタックル』のような番組でアニメ規制がテーマにされるたびに活発な論争がネットで繰り広げられ、規制派・反対派とも議論が平行線のまま数日で沈静化――いわば一種の“炎上祭り”として人々の時間と労力が消費されていくことは変えられないだろう。

 そうした不毛な論争の繰り返しにならないよう必要なのは、「規制推進派と反対派 それぞれがフェアに議論できるプラットフォーム」を整備することではないだろうか? 実際のところ、性犯罪の被害を減らすことと、アニメ好きへの偏見をなくすことは排他的ではない。充分に両立が可能であり、本来なら両者は争う必要がないのだ。

 まずアニメ規制を推進したい立場の人は、“アニメ=有害”という四半世紀前のステレオタイプな思い込みを捨てていただきたい。あなた方が率先してやるべきことはレッテル貼りではなく、これまでゲームやテレビに対して行われてきたのと同じ“アニメと犯罪の関連性を示す実証的な研究”のはずだ。

 そして規制反対派の人たちも、あまり口汚い言葉で相手を罵ったり、ましてや番組スタッフに殺害予告を送ったりしてはいけない。オタクは完全に市民権を得た! とばかりにTPOをわきまえずオタク趣味(アニメに限らず)を全開にしている人は、悲しい話だが筆者もリアルでしばしば目撃する。これじゃ偏見を持たれても仕方ないな、などと世間に思われないよう、趣味もほどほどに節度をもって楽しんでいただきたい。

 このように両方の立場がそれぞれ冷静になってこそ、“アニメを規制すべきかどうか”の建設的な議論が本当の意味でスタートすると筆者は考えている。
(文/浜田六郎)

【記事作成にあたって参考・引用元とした統計資料、サイト】
・警察庁「犯罪統計書」(https://www.npa.go.jp/toukei/index.htm
・子どもの犯罪被害データベース(http://kodomo.s58.xrea.com/grape.htm
・日本動画協会(http://www.aja.gr.jp/
・cakes掲載「ゲームと犯罪の因果関係は明らかにできるのか?——フェアな比較の重要性」(https://cakes.mu/posts/375
・国立国会図書館 カレントアウェアネス・ポータル「各種メディアの心理学的な影響・発達的研究」(http://current.ndl.go.jp/node/8473

マンガはなぜ規制されるのか - 「有害」をめぐる半世紀の攻防 (平凡社新書)

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”ループもの”ばりに繰り返してても仕方ないので、建設的な議論を。

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