“アニメ規制論”検証! 『TVタックル』をめぐり過熱した論争を振り返る

2014.09.18

 放送開始から25年の歴史をもつテレビ朝日系列の情報バラエティ番組『ビートたけしのTVタックル』(以下、『TVタックル』)。毎回さまざまな時事問題をテーマに熱い討論がかわされる『TVタックル』だが、9月1日に放送されたテーマ「ロリコン&暴力 アニメに規制は必要か?」が大きな話題を呼んだ。

“アニメは犯罪を誘発するから規制すべき”という出演者の見解やそれに対する反論などを受け、ネット上でも規制派と反対派が意見をぶつけ合い、放送の翌々日まで『TVタックル』がツイッターのトレンドワードに入るほど議論が活発化。おまけに番組関係者への殺害予告ツイートまで拡散される異例の事態となった。

『TVタックル』の放送内容に向けられたネットユーザーの声は実に多種多様。「オタクに人権はない」「アニオタはキモいから規制されて当然」といった賛成意見もある一方、多くを占めたのが「いかにもステレオタイプなオタク像を用意して“アニメ=有害”と誘導しかねない」番組構成への批判意見だった。

 筆者もこの番組内容、というより“アニメ好き=犯罪者予備軍=規制すべき”といった規制派の主張に違和感をおぼえた1人。そこで今回は放送後にネット上でかわされた議論も踏まえながら、『TVタックル』で唱えられた規制派の主張を改めて検証していきたい。

■本当にアニメは犯罪を誘発しているのか?

 アニメ(に限らずオタク全般)を犯罪者予備軍として扱う時、必ず展開されるのが「暴力シーンや性的シーンを見た人間は、それを現実でも真似しようとする」というもの。この理論について、番組では “これまで1万人以上の犯罪者を見てきた”という東京未来大学こども心理学部の出口保行教授が、心理学でいうところの“モデリング理論”として紹介。規制派はこれを論拠として、「実際に○○事件の犯人はアニメファンで、現実と区別がついていないような供述をしていた」といったケーススタディ(事例研究)的なアプローチをすることが多い。番組に出演した自民党・土屋正忠議員も、実例として2011年の熊本女児殺害事件を挙げつつ、「(犯罪に対するアニメの影響は)現場で取り締まっている人たち の実感なんだ」と強弁していた。一方で、規制反対派のマンガ家・江川達也氏や評論家・岡田斗司夫氏は、アニメが犯罪を誘発するというデータが存在するのであれば、それを提示した上での議論を求めた。

 そこで、まずは下のグラフをご覧いただきたい。グラフは「TVアニメタイトル数」と「小学生以下の強姦被害数」を並置したものだ。

「TVアニメタイトル数」はその年の新規作品+前年から継続している作品の合計数、「小学生以下の強姦被害数」は未就学児童+小学生の被害者数(男児の被害も含む)を合計してある。統計データは警察庁の犯罪統計(https://www.npa.go.jp/toukei/index.htm)、日本動画協会(http://www.aja.gr.jp/)で公開されているものを使用。

 グラフを見る限り、アニメ放送が盛んになるにつれて幼児の強姦被害数は大きく減っていることがわかる。これを見ると、『TVタックル』で語られた規制反対派の主張に正当性があるように見える。

 ただし「見たことか。アニメはむしろ性犯罪を抑制しているじゃないか!」と規制反対派の人たちが勝利宣言するのは早計だ。上記データが示しているのは「“TVアニメタイトルの増加”と“幼児への強姦犯罪件数が減少”したタイミングが同じである」ことだけで、お互いの因果関係までは証明されていない。隠された第三・第四の要因があるかもしれないため、今度はその要因について学術的検証が必要となってくる。

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