安田理央の「特殊古書店ダリオ堂」 第9回

「眼にガラス」「チョコレートと銀紙」etc…“不快なのにやめられない”ぞぞっとしたい人のための本

――ようこそ、「特殊古書店ダリオ堂」へ。当店では、ちょっと変わった本たちを皆様にご紹介していきましょう。

140915_rio00001.jpg『ぞぞっ』(中山泰/飛鳥新社/2003年)

 今回紹介するのはダリオ堂としては、珍しく新しい本ですね。2003年発行ですから。あ、でも、もう10年以上前になるのか。ちょっとびっくりしちゃいますね。90年代でも、つい最近な気がしちゃうもんなぁ。

 真っ黒な表紙に小さなピンク色の文字で「ぞぞっ」とだけ書かれています。これがタイトル。パッと見ても、変な本だってことがわかりますよね。

 しかも帯には「ゾゾーッとしたい人、この指とまれ!」「これはとてもキケンな本だから、うかつに手を出さないほうがいいよ」なんて書いてあるのです。こんなこと言われたら、別にゾゾーッとしたくなくても、手を出してしまいたくなりますよね。

 パラパラとめくると、シンプルなイラストと短い文章が並んでいる絵本的な内容の本だということがわかります。

 しかし、その絵が問題なんですね。「眼にガラス」「チョコレートと銀紙」「歯茎に麻酔」。こうやって絵に添えられたタイトルを書き移すだけでも、背筋がゾッとします。生理的な嫌悪感というんでしょうか。

140915_rio00002.jpg「眼にガラス」
140915_rio00003.jpg「チョコレートと銀紙」

 これは、こうした「ゾッとする」シチュエーションばかりを集めた本なのです。切手を舐めようとして封筒の端で切ってしまったらしい「切れた舌」や、男にしかわからない「ジッパー」のような、わかりやすい「イタイ話」だけではなく、「イクラ」「靴下の跡」「生卵に血」といった、抽象的な「ゾッ」もたくさんあります。この辺は「ゾッ」を共感できるかどうか、個人差もありそうですね。

140915_rio00005.jpg「ジッパー」
140915_rio00004.jpg「生卵に血」

この「ぞぞっ」感にはなぜか脱力するような快感があります。だからこれを意識的に引っ張り出して遊ぶこともできます。(中略)でも、この本を作った本当のところを考えてみると、キャーキャー言って逃げる女の子をヘビやトカゲを持って追いかける気持ち、の方により近いかもしれません。」(あとがきより)

 怖いものみたさ、みたいな感じでしょうかね。確かにこの本、パラパラとめくっては、「ゾッ」として放り投げるようにして閉じ、でもまたしばらくすると、ついパラパラと見てしまうんですよ。不快なのに、やめられない。マゾ的な快感なんですかねぇ。

 ところで、この本の作者の中山泰さん、初期の大滝詠一のジャケットなどを手がけているアートディレクター&イラストレーターなのです。中山さんのちょっとレトロで洒落たタッチ、大好きでしたから、意外なところでの再会にはびっくりしました。

安田理央(やすだ・りお)

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1967年、埼玉県生まれ。主にフリーライター。及びアダルトメディア研究家、ニューウェーブ歌手、など。主な著書に「日本縦断 フーゾクの旅」 (2004年 二見書房)「エロの敵 今、アダルトメディアに起こりつつあること」(2006年 翔泳社 雨宮まみと共著 )、「45歳からのアニメ入門」(2013年 Kindle 田口こくまろと共著)などがある。
●公式サイト<http://www.lares.dti.ne.jp/~rio/
●公式ブログ<http://rioysd.hateblo.jp/

ぞぞっ

ぞぞっ

ぞぞっとしたい人ー?

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