スクウェア・エニックスの著作権侵害の可能性はグレー!? 『ハイスコアガール』問題について福井健策弁護士に話をうかがってみた

――SNKプレイモアが、今回の告訴とは別の訴訟を提起する可能性はあるのでしょうか?

福井氏 刑事告訴とは別に、著作権侵害で民事訴訟を起こす可能性はあるでしょう。他方、著作権以外の裁判ですと、無論ダメモトでも起こせますし、裁判所がSNKの言い分を認める可能性がないとは言えませんが、やや低いと考えます。やはり、著作権で進めていくのではないでしょうか。

――作品にはSNKプレイモアのキャラクターが登場していますが、キャラクターのパブリシティ権を侵害していることになるのでしょうか?

福井氏 パブリシティ権は、実在の人物、もしくは、デーモン小暮閣下のような、実在の人物の延長線上にあるキャラクターにしかありませんので、ゲームの架空キャラクターには認められないでしょう。したがって、パブリシティ権侵害はないと考えられます。

■スクウェア・エニックスへの家宅捜索は行き過ぎだった!?

――SNKプレイモアはスクウェア・エニックスに再三該当作品の販売停止を求めていましたが、スクウェア・エニックスはそれを無視していました。これは裁判に影響が出ることなのでしょうか?

福井氏 仮に裁判で著作権侵害が認められた場合には、“わざと侵害を継続したよね”という「故意の認定」であったり、「損害額増額」の要素にはなりえます。ただ、そもそも侵害や違法行為が認められなければ、無視をしていても問題ありませんから、影響を与えることはありません。

――スクウェア・エニックスは大阪府警の家宅捜索を受けていますが、その必要性はあったのでしょうか?

福井氏 スクウェア・エニックス側の故意や損害額の認定にとって、関連性がないとは言えません。ただ、一般的に警察は二次創作的な事案で不用意に動くべきではないと思いますので、家宅捜索までするような事案だったかなという疑問は残ります。

――SNKプレイモアは今回スクウェア・エニックスを刑事告訴していますが、民事でなく刑事告訴にした理由、またその意味はあるのでしょうか?

福井氏 もちろん民事と刑事両方を進めてもよいのですが、一般に、刑事だけを選択する理由として三点ほどあります。第一に、当然ながら悪質だと感じた時に、お金の問題ではなく、処罰を望むことがあります。もっとも、著作権侵害のほとんどのケースは、現実には罰金刑で終わっています。ただ、同じお金でも民事(賠償金)と刑事(罰金)では性格が違い、刑事では前科前歴がつきますので、相手にとっても痛手とは言えそうです。

 第二に、決着が早いこと。民事は判決が出るまで通常1年かそれ以上かかります。刑事は早ければ数ヵ月で決着がつきます。今回のケースも刑事告訴を受けて、休載しています。民事で差し止め判決を取ろうとする場合、ずっと時間がかかるでしょう。

 第三に、不謹慎な言い方ですが、経費的な負担が少ないことが多い。これはケースによりますが、民事訴訟を1年闘うと、弁護士報酬がかなりかかります。刑事はスムーズに刑事告訴に至れば、その後は基本的には警察・検察側での進行になりますから。その意味で、「我々は悪質だと思うから刑事告訴に踏み切った。あとは国が判断することです」という割り切りもしやすい、と言えるかもしれません。

――今回のケースは、スクウェア・エニックスとSNKプレイモア間の問題ですが、作者の押切蓮介氏の責任問題が問われることはないのでしょうか。

福井氏 出版元のスクウェア・エニックスが違法と判断されれば、押切さんも恐らく違法ということになります。ただし、両方処罰を受けるかは別問題です。

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