「自主規制」の嵐だった『エヴァ』 放送しておいて理由を開示しない日本テレビの醜態

 去る8月26日、地上波で初めて放送されたアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の劇場版『THE END OF EVANGELION 新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』。大方の予想通り、自主規制と思しきカットの嵐に、視聴者などからは「放送する意味があるのか」といった非難が殺到した。果たして、そこまで作品をズタズタにして放送する意味があったのか? 放送を行った日本テレビに取材した。

 この作品は、冒頭で主人公・碇シンジはオナニーをするし、血が飛び散るような残虐シーンは次々登場する。それだけに「ある程度の自主規制は仕方ない」と視聴者も考えていたようだ。ところが、実際の放送では、途中で画面が真っ暗になり音声だけが流れたり、静止画像で音声だけというシーンもたびたびあった。激しい光の明滅シーンなど、仕方ない部分もあるにせよ、重要シーンもカットされていたため、初めて見た人にはまず理解不能な放送であったろう(もっとも1997年の劇場公開時に映画館で鑑賞したファンも脳内に「?」がいっぱい点灯していたけど)。

 いったい、ここまで作品を切り刻んでも放送する意義はどこにあったのか。

 日本テレビ広報部に取材を申し込むと、これまでの放送中止・自主規制の取材と同じく「取材趣意書を送ってくれ」という。

 さっそく質問事項をまとめて送ったところ、次のような答えが返ってきた。

<回答>

 当社では番組の制作過程についてはお答えしておりません。

 以上。……ちなみに、この回答が戻ってくるまで、中一日かかった。

 これまでの取材でも明らかだが、テレビ局はこうした問題について、まったく中身がある回答をしないのがデフォルトだ。結局のところ、放送したら問題になりそうだからカットしただけ。これを放送する意義なんて考えたこともないのだろう。そうしたことをちょっとでも考えていたら、カットなんてしないはずだ。

 少々、話はズレるが日本テレビはかつて意義あるからと残虐シーンを隠すことなく放送したことがある。1965年に報道番組『ノンフィクション劇場』枠で放送された「南ベトナム海兵大隊戦記」が、それだ。南ベトナム軍の海兵大隊に従軍取材した、この番組はベトコン狩りの容疑者が射殺され、兵士が生首を手にするシーンが、そのまま放送された。この当時、日本テレビは「これらのシ-ンは正視しがたいが、ベトナム戦争の実態を知ってもらうために、あえて放送する」ことを確認していたという。当然、反響は大きく時の政権やアメリカからの抗議もあって翌週以降に放送予定だった第2部、第3部は「局の自主判断」で放送中止へと追い込まれた。現在でも日本のテレビ史に残る放送中止事件である。

 でも、これももはや過去の話。そのような腹のある人なんて、テレビ局にはいないんだろう。

 いずれにしても、今回のエヴァは、テレビ局がいかに無難に生きたいサラリーマンによって構成されているか、歴史に残る資料になりそう。録画しておいてよかった!
(取材・文/昼間たかし)

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