『お前はまだグンマを知らない』ができるまでー直前まで「掲載されないかも」と言われていた!?【インタビュー後編】

 今TwitterやFacebookで「すごくヤバイ」「グンマ怖すぎるよ」などと話題になっている、群馬県の実態を描くコメディマンガ『お前はまだグンマを知らない』。前回は作品がヒットした理由について、作者の井田ヒロト先生からお話しいただきました【前編はこちら】。

 先生曰く、群馬県がたびたびネタにされていることについて、群馬県庁も耐性がついてきているのだとか! しかし、先生はそんな群馬を広めるためにマンガ作りをしているといいます。今回は、引き続き井田先生に『お前はまだグンマを知らない』の制作秘話を教えていただきました! 「こんな感じで作られたんだ」と思うような発見がいっぱいのインタビューを以下からお伝えします。

――そもそもこのマンガを出すとき、出版社は難色を示したそうですが、具体的にどんな流れで始まることになったのでしょうか?

井田ヒロト(以下、井田) 流れはとにかく担当編集の折田さんが最初に、「いけますよ、描きましょう!」と言ってくれて。ただ、そこからもっと上の方々にプレゼンする段階で難色示されたんですよ。固有名詞もガンガン入ってくるマンガなので、いろいろ訴えられるかもしれない、問題になるかもしれない、と。それは理解もできるんですが、かと言って固有名詞を使わずに描くこともできないし、だったらもう描くだけ描くから、あとは折田さんが闘ってくれと。丸投げしました。

 初掲載の昨年10月27日直前まで「やっぱり載らないかもしれない」と言われていましたが、もしダメだったらニコニコ静画なんかで勝手に発表しようと思っていました。

――だからこの作品の群馬はカタカナで「グンマ」、なんですか? でも、固有名詞がたくさん出てきて、群馬だってことは変わらない気がしますが……。何が違うんでしょうか、漢字とカタカナって。

井田 漢字とカタカナについては、やっぱりギリギリ言い訳が立つということらしいです。「これは群馬のことじゃない!架空の【グンマ】の話だから!」と言えると、裁判で有利なんじゃないですかね(適当)。

――適当じゃないですか(笑)。けど言わんとしていることはわかります。あと、群馬県のソウルフードって、井田先生も当たり前のように食べていると思うのですが、作中で敵視されている栃木の食べ物って食べる時に罪悪感がないでしょうか?

井田 栃木の食べ物っていうと、しもつかれですか? あれは一生食べる機会はありませんね(確信)。ちなみに、餃子とイチゴは正直大好きなんだぜ……! というか、そもそも餃子は、ニラ、キャベツ、豚肉と、材料的に群馬と栃木のコラボができるんですよね。(ニラが栃木県の特産、キャベツ豚肉は群馬県の特産)これが双方の鎹になりそうな……。いや、ならなくてもいいんですが……。

――罪悪感はこれっほっちもないんですね(笑)。それとマンガの中で、「トチギ」を敵視するようになった経緯って何なんでしょうか? マンガで「どんだけトチギに怒りを感じているのか」と気になりましたが……。

井田 栃木を敵にしようと思った理由は、まずスマホアプリの『ぐんまのやぼう』をやったことがきっかけです。そこから、意識し始めました。あれ、領土に隣接している地域から侵略ができるんですが、まず初めの時点で群馬に隣接していて一番簡単に侵略できる設定になっているのが栃木県なんですよ。だったら、向こうからもまず侵略してくるだろうなと。『逆襲の栃木』というアプリもありますしね。ぶっちゃけ、リアルでは群馬県民は自国領土で満足しているきらいがあるし、栃木県民はきのこ取りにしか興味ないんじゃないのかとも思いますけどね。まぁ、マンガにする以上、敵となる存在はいないと。

――別に現実に何かあったわけじゃないんですね(笑)。群馬出身者が栃木の県知事になった、的な裏切りエピソードがあるわけではない、と?

井田 あ~、そこは調べてなかったな。そうだったら面白いですね! 調べてみようかな。ただ、まぁ、群馬にとって栃木は最終的に屈服さすべき相手というわけでもないですから。そもそも、群馬の敵はほかにおるんや!

――敵ですか(笑)。それでは、このマンガを描き始めて、どれぐらい地元愛が深まりましたか? 変化についても教えていただきたいです。

井田 地元愛が自分にあるという言い方はしないようにしていますが(あえてそういう言葉にすることに違和感があるので)、とにかく図書館の地域関連図書のコーナーに足しげく行くようになりました。あと、Facebookの友達登録が去年は13人だったのに、今年は知らない方からたくさん申請してもらえたので大幅に増えました。ほかには、ぶっちゃけ特にないですね……。家から出ないし、親せきにもあまり会わないので……。

 たまに親の知り合いが「お子さんのマンガ読んでるわよ」とわざわざうちの親に伝えてくるのは本当に心が痛いので、やめていただきたいです……。その前に何で知ってるんだと(笑)。あと弟妹がいるんですけど、弟は半笑いでぬるく応援してくれますが、妹は「Hなネタはやめてくれ。友達に見せられない」と文句を言ってきます。描いている途中で否定的なことを言われると本当に気分と作業効率が落ちるので、最近妹と距離を置いています(笑)。

――いつもネタ探しは図書館が主ですか? それとも、担当編集の折田さんから「次はコレでいこう」と資料をもらう感じですか?

井田 ネタは、最初に「次は白衣大観音で行こう」「次は草津温泉で行こう」とざっくりと方向を決めてから、手当たり次第に資料を探す感じです。図書館とネットが主な収集源です。折田さんは横浜市民なので、自分には分からない「群馬県民以外の視点」をレクチャーしていただいています。長らく群馬県民をやっていますから、大体のあたりみたいなものはつくので、調べると言っても元々知っていることの裏付けや確認という感じです。ただ、関連本を読むのが面白くなって原稿が遅れることもあります……(笑)。

――なるほど。マンガのネタはサクサク出てくる感じなんですね。今回は、色々と教えていただきありがとうございました。最後に、2巻の作者おすすめポイントなど一言お願いします。

井田 2巻ではトチギが取り上げられていますが、他県のことを描く時は無理矢理にでもリスペクトの気持ちで描くようにしていますので、トチギ人にも楽しんでもらいたいです。トチギの“汎用人型決戦兵器舩坂弘”は要チェック……!

――ありがとうございました!

※※※※※※
 ちなみに、筆者的に『お前はまだグンマを知らない』2巻は、グンマの女子高生の悲しい運命も要チェックです。中には女性が読むと、背筋が凍ってしまうようなシーンも……! 確実にページをめくる手が止まらなくなるはず。未読の人はぜひ読んでみて、「グンマって面白いんだな~」ということを感じ取ってほしいと思います。
(取材・文/水野渚紗)

■『お前はまだグンマを知らない』(くらげバンチ)
http://www.kurage-bunch.com/manga/gunma/

お前はまだグンマを知らない 1 (BUNCH COMICS)

お前はまだグンマを知らない 1 (BUNCH COMICS)

担当編集さんが「横浜」出身なのがなんか(笑)

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