読まなきゃよかった……!? いや、レイヤーへの一層のエロスを喚起する傑作『コンプレックス・エイジ』

 8月22日に単行本第一巻が発売された、「週刊モーニング」(講談社)連載中の佐久間結衣氏の連載作『コンプレックス・エイジ』が「あまりにリアル!」と話題を集めている。

 佐久間氏は34歳のゴスロリ趣味のヒロインを描いた『コンプレックス・エイジ』で第63回2013年度前期ちばてつや賞一般部門を受賞。ネットでも公開された同作品は125万PVを越える話題作となった。その佐久間氏が同タイトルで開始した連載作は、26歳派遣社員のコスプレイヤーを描くもの。その描写が単なる「あるある」を越えて残酷なほどにリアルだと、実際のコスプレイヤーなどからも賞讃の声を集めているのだ。

 コミックマーケットを始めさまざまなイベントで目にし、メディアを通じて一般にも広く知られているコスプレ趣味。けれども、「綺麗だな」「可愛いな」あるいは「エロいな」とハァハァすることはあっても、そのリアルな実態に触れることはあまりないはず。しかし、実際のコスプレイヤーまでもが賞讃する作品に描かれるコスプレイヤーの世界は「読まなきゃよかった」と思うレベルに残酷だ。

 日常ではなんら目立つところもない派遣社員のヒロインは、キャラに成りきれてない相手に「遊びでやらないで」と言い放つほどコスプレに実存を賭けている。ゆえに、自分よりもキャラに成りきれているコスプレイヤーに出会えば、嫉妬の入り混じった感情を抱く。ネットでネガティブな発言がありそうなスレを見つけても思わずクリックしてしまうし、どこか一般社会からは疎外感も感じているのだ。

 単なる趣味なのに、そこまで気苦労があるなら止めればいいじゃないか? でも、それは不可能なことである。なぜなら、キャラになりきることによって彼女は“救済”されているからである。

 コミックマーケットの雑踏を見ていて、ふと思うことはないだろうか。年2回のコミケに行くことだけを楽しみに生きている人も星の数ほどいるのではないかと。作品を楽しむこと、あるいは作ること、コスプレすること、形は違っても、すべては日常の中で積もっていくどす黒いものを発散することで“救済”されているわけである。

 本作を通じて、多くの男子(女子もか?)がコスプレイヤーに対して行っている鑑賞する楽しみ、あるいは性欲とか何がしかの欲望が完全に壊された人もいるのではなかろうか。そういう方面からは「読まなきゃよかった」となるだろう。

 けれども、それはあまりにレベルの低い話である。よく考えてみよう。イベント会場でホントにコスプレイヤーがエロく見えるのは、喫煙所で気を抜いて煙草を吸っている時とか、水分を補給している時じゃないか。

 本作は、コスプレイヤーも血肉の通った人間であることを改めて認識させてくれた。「光あるところに影がある(byサスケ)」……こんな影の部分を知ったら、コスプレイヤーがますますエロく見えてたまらんよ。
(文/ビーラー・ホラ)

コンプレックス・エイジ(1) (モーニング KC)

コンプレックス・エイジ(1) (モーニング KC)

“装い”と“素顔”のギャップ萌え

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